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(閑話)真由美の放課後
真由美の記憶
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真由美の身体が不自由になったのは、事故であったと周囲の者に説明しているが、実際はテロによって誘発されたもので、その時真由美は実母も両足の自由と共に失っていた。しかし、真由美は不可解な事があった。それほどの衝撃的な出来事のはずなのにその時の記憶が全くなく、またそれ以前の記憶が殆ど残っていないのだ。その点について父に聞いても、それは精神的なショックが大きかったから仕方ない事だし、無理に思い出さない方が良いと諭されるのだ。
そういわれても、真由美は思い出そうとするのだが、殆ど思い出せないという事が悲しかった。その理由を医師に尋ねても、一種の記憶障害だから特に現在の生活に支障もないから、無理しなくてもいいといわれるのだ。そのうち思い出すかもしれないし、一生何も思い出せないかもしれないと諭されていた。
はっきり覚えているのは、自分の足が太腿の真ん中付近で無くなった時の衝撃が最初であった。もしかすると、その衝撃で記憶を失ったのかもしれないといわれている。その時、なぜサイバネティクス技術による義足を付けなかったかの理由について、医師は真由美の身体が耐えられなかったからと説明してくれたが、その詳しい理由は教えてもらえなかった。
それからしばらくして、一種のサイボーグ化である義足取り付けを提案されたが、そのころには真由美は人間の身体を機械に改造してしまう父の会社の製品に酷い嫌悪感を抱くようになったため、以来ずっと拒絶してきた。 そのように 拒否できたのも姉と慕う愛莉の存在が大きかったからだ。なのに彼女は行方不明になっている。
「真由美お嬢様、今日は特別なお客様が来られるとの事ですから、ドレスに着替えてください」
運転手はそういったが、実はこの運転手は人間ではなく、父の会社の製品でセバスチャンというコード名がつけられたアンドロイドだった。しかも外観は人間と見分けがつかないほどの精巧さだった。
「わかったわ! 着替えるのは見ないでちょうだい! あなたは男性型なんだからね!」
「かしこまりました!」
真由美は父が選んだドレスだから、どうせロリコン趣味が入ったようなファンタジーなドレスでも入れているんだとおもったが、開けてみると意外にもシックな大人の雰囲気が漂うイブニングドレスが入っていた。それには意外に思った。
真由美はとりあえず着替え始めた。足が不自由でも一人で着替えられるので、問題は無いのだか、いつも嫌なのは自分の足の切断面をみることだった。そこだけは他の人と違う場所であった。でもそれが自分という人間のアイデンティティだと思ってもいた。
「今日の所は腫れていないよね。血も滲んでいないしね。それにしても娘をどこに連れ出そうとしているのかしらパパは?」
そういいながら、真由美は切断面に形だけの義足をはめた。この義足は見かけだけのもので、歩く事は出来ないが、初対面の人に与える衝撃を和らげるために用意しているものだった。本当は嫌だが父にそうしろと言われているからしかたなかった。
「それにしても、あたしってバカよね? この足を失った時以前のことを思い出せないから」
模造の義足を装着しながら、自分の母の顔をあんまり覚えていない理由を考えていた。写真は愛莉とのツーショットと一緒にいつも持っていても、その顔の女性との思い出がないのはなぜなんだろうかと。
そういわれても、真由美は思い出そうとするのだが、殆ど思い出せないという事が悲しかった。その理由を医師に尋ねても、一種の記憶障害だから特に現在の生活に支障もないから、無理しなくてもいいといわれるのだ。そのうち思い出すかもしれないし、一生何も思い出せないかもしれないと諭されていた。
はっきり覚えているのは、自分の足が太腿の真ん中付近で無くなった時の衝撃が最初であった。もしかすると、その衝撃で記憶を失ったのかもしれないといわれている。その時、なぜサイバネティクス技術による義足を付けなかったかの理由について、医師は真由美の身体が耐えられなかったからと説明してくれたが、その詳しい理由は教えてもらえなかった。
それからしばらくして、一種のサイボーグ化である義足取り付けを提案されたが、そのころには真由美は人間の身体を機械に改造してしまう父の会社の製品に酷い嫌悪感を抱くようになったため、以来ずっと拒絶してきた。 そのように 拒否できたのも姉と慕う愛莉の存在が大きかったからだ。なのに彼女は行方不明になっている。
「真由美お嬢様、今日は特別なお客様が来られるとの事ですから、ドレスに着替えてください」
運転手はそういったが、実はこの運転手は人間ではなく、父の会社の製品でセバスチャンというコード名がつけられたアンドロイドだった。しかも外観は人間と見分けがつかないほどの精巧さだった。
「わかったわ! 着替えるのは見ないでちょうだい! あなたは男性型なんだからね!」
「かしこまりました!」
真由美は父が選んだドレスだから、どうせロリコン趣味が入ったようなファンタジーなドレスでも入れているんだとおもったが、開けてみると意外にもシックな大人の雰囲気が漂うイブニングドレスが入っていた。それには意外に思った。
真由美はとりあえず着替え始めた。足が不自由でも一人で着替えられるので、問題は無いのだか、いつも嫌なのは自分の足の切断面をみることだった。そこだけは他の人と違う場所であった。でもそれが自分という人間のアイデンティティだと思ってもいた。
「今日の所は腫れていないよね。血も滲んでいないしね。それにしても娘をどこに連れ出そうとしているのかしらパパは?」
そういいながら、真由美は切断面に形だけの義足をはめた。この義足は見かけだけのもので、歩く事は出来ないが、初対面の人に与える衝撃を和らげるために用意しているものだった。本当は嫌だが父にそうしろと言われているからしかたなかった。
「それにしても、あたしってバカよね? この足を失った時以前のことを思い出せないから」
模造の義足を装着しながら、自分の母の顔をあんまり覚えていない理由を考えていた。写真は愛莉とのツーショットと一緒にいつも持っていても、その顔の女性との思い出がないのはなぜなんだろうかと。
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