冤罪! 全身拘束刑に処せられた女

ジャン・幸田

文字の大きさ
68 / 200
エリーは探偵として推理する

69・固められた身体

しおりを挟む
 愛莉は少し嬉しくなった、しかし身体を自由に動かせるといってもその身体は変わり果てていた、機械の身体に。こんな固められた身体を自由に動かせたとしても、本当に自由ではなかった、囚人扱いのままだし、人間に戻れるわけではないから。

 仮想空間や想い出の中にある山村愛莉に戻っていなかった。まだガイノイドのエリーだ。こんな姿じゃ真由美の前でいるのも嫌だった。そのとき、車椅子の車輪の回転音がした。

 「長崎先生、なにされているのですか? あれまあ、エリーと一緒ですか? 丁度良かったわ」

 真由美の声に愛莉はおもわず身体を動かしてしまいそうだった。どうやら身体の自由を獲得したようだったが
、今は我慢するしかなかった。

 「安養寺君、どうしたんだ? いま、エリーのボディに汚れがついていたから、拭っていたんだ」

 淳司はダウンロード完了したことを確認してから首筋からメディアを引き抜いた。そしてハンカチで拭って誤魔化そうとしたわけだ。真由美はその動作に特段気にすることなく話を続けた。

 「そうですが、午後から理工学部に見学しに行くのですが、許可証はこれでいいですよね? 」

 そういって真由美は持っている端末で電子許可証を表示していた。

 「ああ、そういえばエリーにも許可証が要ったよね。その中に入っていないようだな」

 淳司は確認すると、急いでどこかにメールを打つと、その電子許可証が変更された。
 
 「危なかったな! これでエリーも介助者として入れるから。エリーはゲートで電子鍵コードをかざすように」

 この時、愛莉はエリーの統括システムが受け取ったのを確認した、その電子鍵コードがロボット用なのが少し悲しかった。

 「かしこまりました、長崎先生。予定通りに安養寺真由美さんと同行します」

 エリーの人工音声システムがそう応答した。どうも、まだ音声までは自由になるようになっていないようだ。

 「お世話になるわ、エリー」

 そういうと真由美はエリーのボディーに触れた、その感覚をエリーの感覚システムを介して愛莉は感じていた。彼女の柔らかな手の温もりを! それを感じる愛莉のボディは固められているのを知らせる事は出来なかった。

 「ありがとうございます真由美さん。なにか山村愛莉さんの手がかりがあればいいですね」

 愛莉はまだ自分の事を言えないことがもどかしかった。でもエリーの動作システムを自由に出来るようになったので、思わず真由美の愛おしい掌を合わせていた。

 「そうだね、それにしてもエリー、あなたの手ってお姉さんみたいの大きさだわ。でも固いけどね」

 そういわれ愛莉は今の自分の身体を呪うしかなかった。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

あるフィギュアスケーターの性事情

蔵屋
恋愛
この小説はフィクションです。 しかし、そのようなことが現実にあったかもしれません。 何故ならどんな人間も、悪魔や邪神や悪神に憑依された偽善者なのですから。 この物語は浅岡結衣(16才)とそのコーチ(25才)の恋の物語。 そのコーチの名前は高木文哉(25才)という。 この物語はフィクションです。 実在の人物、団体等とは、一切関係がありません。

百合ランジェリーカフェにようこそ!

楠富 つかさ
青春
 主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?  ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!! ※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。 表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

上司、快楽に沈むまで

赤林檎
BL
完璧な男――それが、営業部課長・**榊(さかき)**の社内での評判だった。 冷静沈着、部下にも厳しい。私生活の噂すら立たないほどの隙のなさ。 だが、その“完璧”が崩れる日がくるとは、誰も想像していなかった。 入社三年目の篠原は、榊の直属の部下。 真面目だが強気で、どこか挑発的な笑みを浮かべる青年。 ある夜、取引先とのトラブル対応で二人だけが残ったオフィスで、 篠原は上司に向かって、いつもの穏やかな口調を崩した。「……そんな顔、部下には見せないんですね」 疲労で僅かに緩んだ榊の表情。 その弱さを見逃さず、篠原はデスク越しに距離を詰める。 「強がらなくていいですよ。俺の前では、もう」 指先が榊のネクタイを掴む。 引き寄せられた瞬間、榊の理性は音を立てて崩れた。 拒むことも、許すこともできないまま、 彼は“部下”の手によって、ひとつずつ乱されていく。 言葉で支配され、触れられるたびに、自分の知らなかった感情と快楽を知る。それは、上司としての誇りを壊すほどに甘く、逃れられないほどに深い。 だが、篠原の視線の奥に宿るのは、ただの欲望ではなかった。 そこには、ずっと榊だけを見つめ続けてきた、静かな執着がある。 「俺、前から思ってたんです。  あなたが誰かに“支配される”ところ、きっと綺麗だろうなって」 支配する側だったはずの男が、 支配されることで初めて“生きている”と感じてしまう――。 上司と部下、立場も理性も、すべてが絡み合うオフィスの夜。 秘密の扉を開けた榊は、もう戻れない。 快楽に溺れるその瞬間まで、彼を待つのは破滅か、それとも救いか。 ――これは、ひとりの上司が“愛”という名の支配に沈んでいく物語。

まなの秘密日記

到冠
大衆娯楽
胸の大きな〇学生の一日を描いた物語です。

セーラー服美人女子高生 ライバル同士の一騎討ち

ヒロワークス
ライト文芸
女子高の2年生まで校内一の美女でスポーツも万能だった立花美帆。しかし、3年生になってすぐ、同じ学年に、美帆と並ぶほどの美女でスポーツも万能な逢沢真凛が転校してきた。 クラスは、隣りだったが、春のスポーツ大会と夏の水泳大会でライバル関係が芽生える。 それに加えて、美帆と真凛は、隣りの男子校の俊介に恋をし、どちらが俊介と付き合えるかを競う恋敵でもあった。 そして、秋の体育祭では、美帆と真凛が走り高跳びや100メートル走、騎馬戦で対決! その結果、放課後の体育館で一騎討ちをすることに。

ちょっと大人な体験談はこちらです

神崎未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない ちょっと大人な体験談です。 日常に突然訪れる刺激的な体験。 少し非日常を覗いてみませんか? あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ? ※本作品ではGemini PRO、Pixai.artで作成した生成AI画像ならびに  Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。 ※不定期更新です。 ※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。

ヤンデレ美少女転校生と共に体育倉庫に閉じ込められ、大問題になりましたが『結婚しています!』で乗り切った嘘のような本当の話

桜井正宗
青春
 ――結婚しています!  それは二人だけの秘密。  高校二年の遙と遥は結婚した。  近年法律が変わり、高校生(十六歳)からでも結婚できるようになっていた。だから、問題はなかった。  キッカケは、体育倉庫に閉じ込められた事件から始まった。校長先生に問い詰められ、とっさに誤魔化した。二人は退学の危機を乗り越える為に本当に結婚することにした。  ワケありヤンデレ美少女転校生の『小桜 遥』と”新婚生活”を開始する――。 *結婚要素あり *ヤンデレ要素あり

処理中です...