冤罪! 全身拘束刑に処せられた女

ジャン・幸田

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エリーは探偵として推理する

59・動機はわかっても黒幕は(4)

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 写真たてを持っている時、午後10時を迎えようとしていた。全身拘束刑受刑者にとっての「消灯時間」である。今どきのガイノイドなどのロボットは人工筋肉で稼働するため休息が必要であった。もちろん24時間稼働するものもあるが、全身拘束刑受刑者「改造」のものは全て休息が必要なタイプであった。

 「早く眠りに入らないといけないのね、なんでこんなに早く休息するように設定しているのだろね」

 愛莉は自分ではどうすることも出来なかった。いま自分の肉体を「拘束」しているエリーの稼働時間は午前6時から午後10時までと設定されていた。そう設定されているのは業務がないので必要ないためだ。丹下教授の退官まで日数はないにもかかわらず。まあ、エリーとして稼働している時は退屈そのものであったが。

 エリーは待機場所に戻るとログオフし始めた。ログオフすると完全に動けなくなる。もちろん緊急事態が発生すれば即応できるように待機状態になっていた。だから、待機状態でも愛莉としての自我は活動できた。でも、ボディの中に何も見えず何も聞こえず、そして何も感じる事は出来なかった。そんな無間地獄のような暗闇の中で愛梨の意識は遠くなっていった。

 「このまま自分の自我が無くなったらどうしようね、せめて真由美ちゃんにあたいはここにいるのよ! そう知らせたいわね」

 エリーの動きは完全にシャットアウトした。フェイスガードのひたいのLEDリングがかすかに光っているのが、わずかに待機状態だと分かる状態だった。ボディ内部の生命維持装置は稼働していたが、それは外部から分からないようになっていた。あくまでエリーはガイノイド、人間を素材にしたと第三者に悟られてはいけないのが、全身拘束刑受刑者の定めだった。人間として扱われないのだから当然だった。

 そのとき、エリーの目の前に犬型監視ロボットがやって来た。そいつはエリーが問題なく定位置で固定されているのを確認し、立ち去っていった。その時、エリーは監視ロボットに問題ないとの信号を送った。これでしばらくはやってこない。

 暗闇の中で愛梨の意識は探偵になったつもりで推理していた。真由美と同行して理工学部に行って何をすべきかを。もっとも真由美に危険な目に合わせないのが前提だ。理工学部に行ったら出来ればあの研究室があるフロワーに行ければベストだ。そして・・・そこまで考えたところで思考がフリーズするのが分かった。あと、もう少しでなにかの答えが出たのに! 愛莉は悔しかったが仕方なかった。あとは、再稼働してするしかなかった。次の日の朝に。
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