冤罪! 全身拘束刑に処せられた女

ジャン・幸田

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エリーは探偵として推理する

58・動機はわかっても黒幕は(3)

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 ガイノイドとしてのエリーは武骨な外骨格、オプションで取り付けられた掃除機能とスキャナー機能、そしてデータバンク形成のための整理システム。それと重量物の移動が目的で、丹下犯罪学研究所の閉鎖に伴う残務整理ロボットとして帝央大学教務課から派遣されてきた。その内臓は本来は別の女性全身拘束刑の囚人だったが、どんな手段を用いたのか分からないが、愛莉と入れ替わっていた。

 エリーは真っ暗な研究所内を移動していた。ここの監視ロボットが次に巡回してくるまで三十分あるので、どうしてもやりたいことがあった。取りあえず用が済んだ淳司のタブレットとの有線接続を解除した。それにしてもボディにコンピュータ用のケーブルを入れるなんて考えてもいなかった。それもこれも今は機械なのだから仕方なかった。

 そして次に向かったのは真由美用として用意された学生用デスクだった。通常、入学したばかりの大学生は自分専用の机なんて用意されないが、どこかの部活に入るなどすれば自分用のロッカーは用意出来た。それなのに真由美はコネで自分の大学構内での活動拠点をここに置いていた。

 デスクの上には、重たい本が置いていた。いくら電子書籍に置き換わったとしても、古くからのスタイルを踏襲している教授のなかには紙の出版物に固執しているので、当然そのような参考文献もあるのだ。そんな本の脇に置かれたのが古めかしい写真立てだった。そこに写っているのは真由美と愛梨だ! それは高校時代の文化祭で半ば強制的にやらされた姉妹として出演した舞台のワンシーンだった。

 その中での愛莉は妹想いのサラという役で、真由美が扮するエマを無実の罪で処刑される運命から助けようという話だった。ちなみに舞台設定は法廷なので、真由美はずっと被告人席に座らされたままだった。それに主役はエマの弁護人で、二人はモブなのだ。それでも写真部が無罪になって喜ぶサラとエマの姿を綺麗にとってくれたので二人の宝物だった。

 「この写真、あたしの分はどうなったんだろうね? 一応、裁判中に私が持っていた私物は全部証拠品として押収されたと、あのヤブ弁護士がいっていたけど、どこかにあるのかしら?」

 愛莉はその写真を見つめていた。その写真は電脳化された視覚認識なのが悲しかった。一応、淳司に頼んで全身拘束刑から解放された場合、どの程度人間に戻るのかを調べてもらったけど、外観はなんとかなるけど、内部で電脳化されたり人工筋肉化されたりした箇所は復元できないので、最高でもサイボークとしかいえない身体になるだろうということだった。

 そんな愛梨はその写真の中の二人になりたいと思っていた。その二人は熱く抱擁していた。でも今の機械の身体では直接真由美の身体と触れあう事は出来ないし、体温を感じる事も出来なかった。

 「せめて真由美ちゃんの肌の温もりを感じたいわ。こんな外骨格のセンサーによる数字で認知だなんていやよ!」

 写真を持つエリーの手は細かく震えていた。その震えは愛莉の心の慟哭どうこくであった。
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