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エリーは探偵として推理する

52・自由な時間(4)

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 愛莉が思い出したのは同じ研究室の先輩だったタオ・メイグオだ。彼女は麗華民主共和国出身の大学生であったが、母方の祖母が日本人で日本語も母国語並みに使いこなせていた。彼女とは何か波長があったので、一緒に食事に行ったり研究を共同でしたりしていたが、そういえば彼女の事は深くは知らなかった。特に八年前のことは。もっとも、それは愛莉も同じであった。辛くなるので両親がいない事は大学では話したことはなかった。

 「タオ先輩? そういえばあたしって電脳化される時にタオ先輩に関する記憶を一時的に失っているのよね。特に、あの研究室での事を。暗号を解いたことは覚えているけど、どんなふうに頼まれたのか分からないな」

 愛莉は電脳にあるデータベースをチェックしてみたが、どうやら封印されている部分があるようだ。それは柴田技師長に電脳化される前の生体脳だった時に洗脳措置を知らないうちに受けていたのかもしれなかった。そういうことは、自分の電脳ってなにかのきっかけがあれば乗っ取られてしまう「トロイの木馬」があるかもしれなかった。今はこうやって愛莉としての意識があるが、なぜそこまでやる必要があるのだろうか?

 「もしかするとあたしの電脳ってエキゾチック・ブレインのメインパーツになるように設定されているのかもしれない。そういうことは、時が来れば今理工学部に潜入しているアイリのボディから電脳を取り出して、接続するかもしれないわ」

 そう推理した時、恐ろしく冷たいモノを感じた。そうなれば本当の機械になってしまう! しかし、なぜエキゾチック・ブレインを復活させようというのだろう? 聞いた話によれば麗華の首都イェンデュー郊外に設置されていたエキゾチック・ブレインはインターネット回線を占拠し世界各国のインフラを混乱させるサイバーテロを引き起こしたという。その被害によって主要国のインフラは暴走し、複数の原子炉がメルトダウンを起こし、大陸間弾頭ミサイルまで発射され、あわや全面核戦争に突入する寸前までいったという。その後、どういう経過をたどったのかはっきりしないが、主要国連合軍によるイェンデュー空爆によってエキゾチック・ブレインは破壊された事になっていたはずだ。しかし、愛莉が解読した機密文章によれば、国防省の地下倉庫に残骸が運ばれており、途中まで修復されたとあった!

 「その修復された残骸はどうなっているのかしらね?」

 愛莉は国防省のサーバーにアクセスした。一度突破しているのだから電脳をもってすれば簡単に出来た。しかし恐ろしい事が分かった!

 「今の国防長官によって移動命令が出されているわ! 場所は・・・帝央大学理学部先端科学研究所? ってことはアソコにあるってことなの?」
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