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エリーは探偵として推理する

40・求めるべき真実(4)

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 帝央大学はこの国でも有力な大学の一つであり、特に法曹界や政界に人材を輩出していた。その人材の中で「闇の司法部」と呼ばれる一種の秘密組織があるといわれていた。今回の愛莉の一件に関与しているのは間違いなさそうだった。

 「うーん、そういうことは私って本当に茶番に付き合わられていたわけね。でも、それほどの組織だったらあの柴田技師長のオバサンに直接依頼すればよかったのよね、あたしの電脳化を」

 いろいろと調べてみると、柴田技師長はヲタクで腐女子などうしようもないオバサンだが、世界でもトップ10に入る人体機械化技術を持っているようだ。ある程度自動化できるようになったとはいえ、電脳化の場合、微妙なタイミングを間違えると、電脳化される前よりもパーソナル能力が劣化するのは珍しくないようだ。愛莉は自分では嫌な事であるが、天才的な空間認識能力などを持っていており、高校時代にはそれってチート能力なのでは、となんて同級生にからかわれていた。

 ただ、柴田技師長が執刀できるのは政府からの通達で、全身拘束刑の執行に限定されていた。あまりにも能力が高いとして、半ば封印されていたわけだ。また全身拘束刑は死刑もしくは絶対的終身刑(注)に処せられる凶悪な囚人、もしくは刑務所で本来厳重に拘禁すべき有期の犯罪者のなかから司法長官が認めた囚人に対して執行されるものである。だから、司法長官もグルといえた。柴田技師長の元に送付された執行命令書には司法長官の署名捺印があったからだ。

 「そうなんだあ、今の司法長官って帝央OBなんだ。やっぱり闇は深そうだわ」

 愛莉は物凄い闇の中に巻き込まれていることを思い知らされた。これって大丈夫なんだろうか? そんな大規模な陰謀にあんなチャラ男と一緒で? そう感じたが今はそれしか手段がなかった、人間に戻るには。

 「えーと、真由美ちゃんは理工学部に講演会を見に行くのよね、その時わたしはエリーとして・・・これって大丈夫なの?」

 淳司の用意したプランに愛莉は絶句した。これって大丈夫なの?


(注)終身刑と呼ばれるものには、場合によっては仮釈放によって出所が可能なものと、文字通り死ぬまで拘禁が解かれないものがある。後者のように出所する可能性のないものを絶対的終身刑とよばれる。通常、日本で行われている無期懲役は前者であるが、仮釈放のハードルが高いといわれている。
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