冤罪! 全身拘束刑に処せられた女

ジャン・幸田

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エリーは探偵として推理する

38・求めるべき真実(2)

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 麗華民主共和国は地政学的にいえば、周辺有力国家群の緩衝地帯で、それで独裁国家で非人道的な事をしてきても数十年以上も維持してきた。もちろん内部でも過酷な警察国家として国民を厳重に管理し弾圧してきた。

 二十一世紀になって世界各国で自国第一主義が跋扈ばっこし、国際環境が不透明さを増していく中で、麗華の指導部がとったのは強力な軍事力という抑止力で他国から身を守る政策であった。初期には核兵器開発と生物兵器開発に邁進まいしんし、質だけで言えば主要国に負けない軍事技術を手中にいれたが、それに対して他の主要国から経済制裁を受けたので断念せざるを得なかった。その断念した軍事技術に代わるものとして手にしたのがサイバー空間における覇道の路であった。

 麗華が手中にしたものが、サイバー空間で各国のインフラを破壊できるエキゾチック・ブレインであった。それはいかなる国が手にしてきたスーパーコンピューターが束になっても適わない能力を有していた。そのシステムの正体が数万人分の政治犯を殺害し電脳化した本体であった。その悪魔は一連の世界同時多発サイバーテロ事件のあとで、麗華の首都主要部に対する報復攻撃て灰燼に帰したとされていた。

 だが、国防省に保管されていたファイルによれば、実際はエキゾチック・ブレインの起動プログラムが回収され、主要国が遺されたデータを共有したとされていた。ただしデータは高度の特殊な暗号によって閲覧しても意味不明な状態になっており、とりあえず各国は持ち帰って封印することになったという。その国は世界主要国のうち調査団に入っていた七カ国であったという。その中に何故かアメリカが入っていなかったので問題になり、公式には読み取り不能とされていたという。

 そのエキゾチック・ブレインの情報を愛莉は閲覧可能にしてしまったというのだ。元々主要国間の秘密協定で解読しないという取り決めがあったが、解読しようにも世界最速のスーパーコンピューターを数年間使わないとならないという事で断念した経緯もあった。なのに愛莉は内容を知らないまま解除したわけだ。

 「それにしても、晴美は口を封じられて殺されたのよね? そんなに大それた事を私がしたのなら、最初に私を殺せばよかったのに、なんでわざわざ私を電脳にする必要があったのだろうね、ガイノイドにしてから」

 愛莉は奇妙な点に気付いた。それは最初から思っている事でもあるが、身寄りのない愛莉を始末して後は生体脳を取り出して電脳にでもすれば、楽だったんじゃないかということだ。
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