冤罪! 全身拘束刑に処せられた女

ジャン・幸田

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エリーは探偵として推理する

28・愛莉の秘密(2)

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 淳司が持っていたのは愛莉が理工学部で見たものと一緒だった。その記録媒体は40年前に導入されたものだった。たしか21世紀初頭に使われていたコンピューターシステムの稼働に必要なもので、現在の学生が使いこなせる代物ではない骨董品だった。

 その昔、アメリカが1970年代に開発した旧型スペースシャトルが当時の最新鋭のコンピューターシステムを導入していたものの、その後、システム改修を行わなかったため、退役直前の時代には世間では使われることがなくなってしまったような、フロッピーディスクで起動するシステムを使っていた事があったという。それと同様に、理工学部もまた古めかしいモノを使っていたんだと思っていた。でも、それは愛莉に暗号を解除させるためであった!

 「それって、私が暗号解除に使っていたものよね? なんで、そんな古いシステムを使わせるんだと思っていたけど。今ならわかるわよ。その解除した暗号って旧式システムで作成したんでしょ? だから今どきのハッカーが打破できなかったというんでしょ。そんな枯れたシステムを熟知しているエンジニアなんて現役にいないからね。だから私を使ってから・・・ってことは、私を電脳化して必要なのは?」

 その時分かった、それがエキゾチック・ブレインだと。そのシステムに必要なのは数多くの電脳化された脳細胞だが、いまなら神経細胞を培養すれば代用できるから、中枢システムとなるパーソナルを持つ電脳があれば、構築可能かもしれないと。

 「気づいたようだね。あんな小難しい暗号を解除できる知性を持つ電脳といえば、たぶんアイリのものだけだ! そう愛莉ちゃんの脳細胞で製造したものだけさ。だから、危険を考えてコピーしたのさ!」

 淳司の言葉に愛莉は膝をついた。私の脳が必要なので嵌められたんだと。でも電脳をどのようにするんだろうか?

 「そういうことは淳司、アイリの電脳がコピーだと気づいたら今のエリーになっている私をさらいに来るという訳なの? そんなことになったら守ってくれるの?」

 愛莉はそう聞いたが意外な言葉が返って来た。

 「それはな、場合によっては守れないかもしれない、それだけ危険な任務になりそうだから」

 淳司は少しバツが悪そうなポーズをした。

 「守れないかもしれないって、ですって? それよりも、私って元の人間に戻れるのですか?どうなんですか?」

 愛莉はまたも淳司に言い寄った、これも意外なというか知りたくないものであった。

 「それはな、完全に元には戻れない。君の身体は一部は一生機械化されたままさ! 外見だけ人間に戻れるだろうけど」

 愛莉は仮想空間なのに血の気が引いていって体温が下がり、足元が寒くなる感覚に襲われていた。
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