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エリーは探偵として推理する

26・仮想空間で(5)

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 エキゾチック・ブレインは一種の都市伝説とされていたはずだった。麗華民主共和国の前政権は世襲の軍事独裁国家であったが、世襲四代目のウン・フェイ大佐は核兵器よりも影響力のある兵器開発に熱心であった。具体的にはサイバー空間における覇道とそれに必要となる超高速スーパーコンピューターの自主開発だった。もちろん世界は出来るはずはないと見くびっていた。しかし、核兵器を開発したのと同じように実現してしまった! まるでオーパーツ的だと揶揄されたサイバーテクノロジーの数々を!

 それらの技術は、全身拘束刑などのような人間を機械に融合するもので、各国で実用化されていたものの延長のはずだったが、電脳化技術は異常ともいえる進歩を遂げていた。ごく普通の人間の脳細胞を大量に用いた超高速スーパーコンピューターという非人道的な産物を生み出したのだ! その製造に大量の政治犯とされた人々を犠牲にしたのは明らかだった。

 その身の毛もよだつ行為には世界の主要国だけでなく伝統的に麗華に対して融和的な外交関係を維持していた近隣諸国からも反発を受け、国連を中心とした包囲網が形成された。そして発生したのが、八年前の世界同時多発テロだった! 麗華軍部が引き起こしたサイバーテロが引き起こしたものだが、その影響は世界的で、数十万人の死者と数千万人の失業者を生み出す惨劇であった。その時の犠牲者には愛莉の両親もいた。

 「これって・・・噂だったのよね? アメリカの情報局が主張したけど、首都が灰燼に帰したので存在していたのか曖昧あいまいになったとか。でも、世界各国でサイバーテロを起こしてから、父さんも母さんも・・・」

 愛莉は仮想空間では泣けることに気付いた。ここは感情という情報をビジョンに投影しているから、当たり前であったが、いまはそれも自分がまだ人間だという証拠であった。

 「これらの画像は最高機密なんだよ。ほかにもエキゾチック・ブレインの設計図や理論、それに製造法が記録されていたんだ。でも、これらは主要国諸国の秘密協定で封印されていたんだ。でも、その封印を意図せず破った天才がいたんだよな、それが君だ!」

 淳司はそういって愛梨の髪を優しく撫でていた。こんな風に撫でる事が出来るのも彼だけであったが。そのとき、愛莉は何故、封印を解いた自分を全身拘束刑にする必要があったのだろうか、不思議に思った。
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