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ガイノイドは人類の奉仕の為に
14・再会
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眠れぬ夜を超えて愛莉の意識は疲れていなかったが、電脳になってしまった今、睡眠不足と判定されると自動的に補助電脳に切り替わってしまった。エリーの機体は本当にただのロボットになった。稼働している間ぼんやりと愛梨の意識はあった。これって、まるでエリーに憑りついている幽霊なのかしらと感じていた。
朝の掃除が終わると丹下教授と淳司が出勤してきた。その顔に愛莉は喜んだが、エリーは二人に”おはようございます”というだけだった。本当はもっといろんなことをぶつけたかったというのに! まだ、エリーのボディを自由にすることが出来ないのがもどかしかった。
「エリー! それじゃあ迎えに行ってくれ! アプリでコマンドは送ったからな、頼んだよ!」
丹下教授に指示されたのは新入学してきた学生の中で介助が必要な者を迎えに行く事だ。そう、真由美のことだ。真由美の事を最も知っている自分が介助ガイノイドだなんて・・・少し情けないような気がした。
真由美は10歳の時に交通事故で足が粉砕骨折などにより、膝から下を切断し車椅子生活になった。でも彼女は下半身の義体化を拒否し続けていた。しかも義足さえも! その理由を愛莉は両親への反発だと聞いていた。真由美の両親は医療用人工筋肉を製造する会社を経営していて、人間を機械のように改造するのに嫌悪感を覚えていたからだ。
新入生のオリエンテーション会場にエリーが向かうと、新入生相手のサークルの勧誘などをする生徒がたむろしていた。その光景は去年見たものだった。この時、あんな奴に出会わなければよかったのにと、愛莉は思っていたが、エリーは指示通りに待ち合わせポイントに向っていた。途中、なんでガイノイドがいるのかという視線が気になったが、我慢するしかなかった。
待ち合わせポイントにしていたモニュメントの前に車椅子の少女がいた。彼女が真由美のようだった。真由美とは去年のクリスマスパーティーで会ったきりだった。その直後に逮捕されたので会えなかった。彼女は死に物狂いで受験勉強したようだった。クリスマスの時点でも合格確率は三割にも満たなかったから・・・
「はじめまして! 安養寺真由美さんですね! 丹下犯罪学研究所所属のエリーです!」
エリーの声掛けに少しギョットした表情を真由美は見せた。
「は、はじめまして! 聞いてた通りにロボットが来たのよね・・・でも、なんだか・・・」
真由美は何故か変な反応を示していた。実は真由美はロボットが苦手で、出来れば避けた方が良いんではないかという女の子だった。高校でも介助用のロボットの利用をしないように自力でやろうとしていたぐらいだから。
「どうされました? 真由美さん?」
エリーはそう答えたが愛莉からすれば歯がゆかった。いつも「真由美ちゃん」「お姉ちゃん」なんて、姉妹のように呼び合っていたから。でも、なんだろうねこれって、と考えているとポツンとこんなことを言った。
「なんかねえ・・・説明しにくいけどね、あなたの機体のシルエットって何故か、その・・・おかしいと思うかもしれないけど懐かしいわね。なんでかな?」
その言葉に一つの仮説が浮かんだ。どうも、真由美の潜在意識は愛莉に会っていると直感で分かったんではないかと。実はエリーのボディは愛莉のオリジナルボディーに寸法が近いのだ。外骨格は愛莉を改造したうえで取りついているので、シルエットが近いのだ。胸部などは液体呼吸システムがあるので膨らみが大きくなっているけど、手足の長さや胴の長さといったものは、大きく変わっていない。
真由美が愛莉のボディラインを知っているのは一緒にお風呂に入って、入浴介助をしていたからである。だから互いのハダカを見ているものだから、校内では百合姉妹なんて言われたけど・・・誤解されてもしかたないけど。
「そうですか。では何をいたしましょうか? とりあえず一緒に行きましょうね」
「お願いします」
真由美はそう答えたが、心になにかがひっかかっているような表情だった。もし許されるのなら愛莉はここにいると言いたかったけど、全身拘束刑の受刑者が自分の本名を名乗ることは許されなかった。だから嬉しいけど少し悲しい再会であった。
朝の掃除が終わると丹下教授と淳司が出勤してきた。その顔に愛莉は喜んだが、エリーは二人に”おはようございます”というだけだった。本当はもっといろんなことをぶつけたかったというのに! まだ、エリーのボディを自由にすることが出来ないのがもどかしかった。
「エリー! それじゃあ迎えに行ってくれ! アプリでコマンドは送ったからな、頼んだよ!」
丹下教授に指示されたのは新入学してきた学生の中で介助が必要な者を迎えに行く事だ。そう、真由美のことだ。真由美の事を最も知っている自分が介助ガイノイドだなんて・・・少し情けないような気がした。
真由美は10歳の時に交通事故で足が粉砕骨折などにより、膝から下を切断し車椅子生活になった。でも彼女は下半身の義体化を拒否し続けていた。しかも義足さえも! その理由を愛莉は両親への反発だと聞いていた。真由美の両親は医療用人工筋肉を製造する会社を経営していて、人間を機械のように改造するのに嫌悪感を覚えていたからだ。
新入生のオリエンテーション会場にエリーが向かうと、新入生相手のサークルの勧誘などをする生徒がたむろしていた。その光景は去年見たものだった。この時、あんな奴に出会わなければよかったのにと、愛莉は思っていたが、エリーは指示通りに待ち合わせポイントに向っていた。途中、なんでガイノイドがいるのかという視線が気になったが、我慢するしかなかった。
待ち合わせポイントにしていたモニュメントの前に車椅子の少女がいた。彼女が真由美のようだった。真由美とは去年のクリスマスパーティーで会ったきりだった。その直後に逮捕されたので会えなかった。彼女は死に物狂いで受験勉強したようだった。クリスマスの時点でも合格確率は三割にも満たなかったから・・・
「はじめまして! 安養寺真由美さんですね! 丹下犯罪学研究所所属のエリーです!」
エリーの声掛けに少しギョットした表情を真由美は見せた。
「は、はじめまして! 聞いてた通りにロボットが来たのよね・・・でも、なんだか・・・」
真由美は何故か変な反応を示していた。実は真由美はロボットが苦手で、出来れば避けた方が良いんではないかという女の子だった。高校でも介助用のロボットの利用をしないように自力でやろうとしていたぐらいだから。
「どうされました? 真由美さん?」
エリーはそう答えたが愛莉からすれば歯がゆかった。いつも「真由美ちゃん」「お姉ちゃん」なんて、姉妹のように呼び合っていたから。でも、なんだろうねこれって、と考えているとポツンとこんなことを言った。
「なんかねえ・・・説明しにくいけどね、あなたの機体のシルエットって何故か、その・・・おかしいと思うかもしれないけど懐かしいわね。なんでかな?」
その言葉に一つの仮説が浮かんだ。どうも、真由美の潜在意識は愛莉に会っていると直感で分かったんではないかと。実はエリーのボディは愛莉のオリジナルボディーに寸法が近いのだ。外骨格は愛莉を改造したうえで取りついているので、シルエットが近いのだ。胸部などは液体呼吸システムがあるので膨らみが大きくなっているけど、手足の長さや胴の長さといったものは、大きく変わっていない。
真由美が愛莉のボディラインを知っているのは一緒にお風呂に入って、入浴介助をしていたからである。だから互いのハダカを見ているものだから、校内では百合姉妹なんて言われたけど・・・誤解されてもしかたないけど。
「そうですか。では何をいたしましょうか? とりあえず一緒に行きましょうね」
「お願いします」
真由美はそう答えたが、心になにかがひっかかっているような表情だった。もし許されるのなら愛莉はここにいると言いたかったけど、全身拘束刑の受刑者が自分の本名を名乗ることは許されなかった。だから嬉しいけど少し悲しい再会であった。
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