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サンドラはアルベルトの黒幕と対決す!(サンドラ目線)

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 サンドラは脱出したばかりの王都に戻った。あまりにも危険なので髪の毛を黒く染めて顔にアバタの模様を書き込んで変装した。王都にはクモオ家の隠密部隊が活動しており、アジトのひとつにもぐりこんだ。

 「お嬢様も無理されるよね。目的は・・・ずばり婚約破棄させた張本人に会うためでしょ!」

 シータは呆れていた。サンドラは夫たる国王に何か危険に遭遇した時に対処できるようにと、護身術ばかりか格闘技も平均以上の能力を持っていた。だから隠密部隊の戦闘員と同じかそれ以上の活動は出来るのであった。

 「そうよ! このまま知らないうちにどこかにいくのは癪にさわるからよ! 婚約破棄された伯爵令嬢なんて貰い手はないのよ! せめて婚約解消ぐらいにしてほしかったものなのにね! アルベルトにあんなことをさせたのはネルディのオジサンじゃないだろうしね!」

 アジトからは王都の大聖堂が見えた。その日はアルベルトとカルメンとの結婚式だった。本当はサンドラは結婚式に潜入したかったが、あまりにも危険性が高いので、ここで待機していた。結婚式の最中も王都から荷物を抱えて脱出する人々の列が見えていた。それはまるで災害を察知したネズミが逃げていくかのようであった。

 「報告します! 結婚式ですが不首尾に終わるようです。粛清によって聖歌隊すら真面に編成できなかったそうです」

 結婚式の様子については逐次報告が上がっていた。クモオ家の隠密部隊の諜報能力は高かった。でも、アルベルトによるクーデター計画を掴んだときは全て手遅れだった。辛うじてクモオ家の主要メンバーとクモオ派の貴族や官吏の一部を王都から脱出させるのが精いっぱいだったが。

 「やっぱりですわ! 粛清、といっても国をぶっ壊す方向に行っている様ですわ。これじゃあひと月も持たないでしょうね。クモオ様も次の計画を実行するしかないでしょうね」

 シータは予想以上に王国の崩壊が進んでいるのを察知していた。アルベルトとカルメンの結婚は王国に死の病を運んできたのは間違いないということだ。

 「お父様は・・・独立するのですか? そしてカール殿下の配下になるってことですよね」

 サンドラがそう言っているとき、轟音が王都中に響いた。この時、大聖堂の鐘楼から複数の釣り鐘が落下する事故が発生した。それはまさに王国滅亡の序曲の始まりであった。
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