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婚約者に要らないとおもわれ追い出された!(サンドラ目線)

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 サンドラを乗せた機帆船は蒸気をあげながら増水した河を下っていた。そのとき王室旗を掲揚した大型船を追い抜いて行った。その船はネルディ一派によるクーデターによって追放されたアルベルトの両親と兄弟を乗せていたようだった。

 「それにしても第一王子は利用されていると認識していないようですね、お嬢様」

 セバスチャンは船室の窓からのぞきながらいった。

 「そうでしょうね、フツーに婚約破棄といわれたら私は従いましたよ。そのとき、何が起きるのかわかっておられたはずですから」

 サンドラは王国の王位継承法で起こりうる事態を考えていた。王位継承の条件として男系男子と嫡子限定があるほか様々なものが定められていた。たとえば他国にあるような側妃の存在は許されておらず、その側妃が産んだ男子は直系であっても王位に継ぐことはできなかった。また将来の王妃の条件として上級貴族もしくは他国の上流貴族出身であり、爵位を持っていても庶子もしくは養子は許されないとあった。また王妃に条件に該当しない者を向かい入れた者は王位継承権は保持できるが、その嫡子には王位継承権は与えられないとあった。

 「ネルディ子爵の令嬢を第一王子は選ばれたそうですが、それは貴賤婚になりかねませんね。そうなれば、どっちにしても現在の王朝は断絶でしょうね」

 セバスチャンはそういった。ちなみに貴賤婚は王族が臣下のものと結婚は出来ないというものであるが、それでは結婚相手の対象が極端に狭くなるので、領地を持つ公爵以上と王国では定められていた。だから子爵であるカルメンがアルベルトと結婚したとしても、二人の子には王位継承権は生じないはずだった。

 「フツーはそうね。でもネルディ子爵は自分で公爵になるでしょうね、欲深いから。ついでにクオモ公爵領も自分のものにしようとするでしょうね」

 そういったサンドラだったが、それらは「あの人」と呼ぶ男からの手紙に書かれていたものであった。そこにはアルベルトを担ぎ出したサンドラが王妃になることを良く思っていない「保守派」の行動の予想が書かれていた。そしてネルディもまた操り人形にすぎないとあった。

 「お嬢様、もう少しで公爵領に入ります。とりあえず安全ですから」

 セバスチャンがそう言った時には日が暮れていた。夜の航行は危険なのでとある島影で停泊していた。その日、アルベルトの出した勅令でサンドラは正式に婚約者の地位を剥奪された。
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