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ざまあねえな!

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 サンドラの兄のレオ、彼もまたサンドラと同様に国民に人気があった。だから王家よりもクモオ公爵家の方が王位にふさわしいという声もあった。平凡なユリウス二世や無能なアルベルトよりも国王に推す声もあった。それにレオとサンドラの兄妹は曾祖父が国王であったから血筋に問題ないといわれていた。ただし女系であったが。

 兄妹の祖母のサンドラは当時の国王の唯一成人した娘であった。このサンドラが女王になれなかったのは、男系男子しか国王になれないという王国の伝統という名の縛りがあったためだ。そのため王家の男系であったが、男爵と地位も低く当時の国王からみたら15代前に分岐したアルベルトの祖父が国王に即位した。結果、一部の貴族が国政を私物化してしまい、政治が混乱した。だから現在の王家の信頼は低かった。

 「って、ことはレオの奴は親父や俺に成り代わって国王になろうとしているんかよ!?」

 アルベルトはいつも苦々しい思いを抱いていたレオの事を思い出して不機嫌だった。レオはサンドラと同じような美貌があるとともに野心があふれているよう嫌だった。もし可能ならサンドラよりも先に追い出すべきだとネルディが言っていたことを思い出していた。

 「そうだろうな。だからわしがサンドラをお前の婚約者にしたんじゃよ。それなのに・・・婚約破棄してしまうからたまったものじゃないぞ!」

 ボヌッチはアルベルトに書類の束に署名させながら顔をしかめていた。

 「仕方ないじゃん! 俺はカルメンが好きなんだから! まさか公認愛人なんていう地位なんて嫌だったし。それにサンドラを抱きたくなかったしな」

 「そうだろうな・・・生理的に嫌がっているのはわかっていたからのう」

 「わかっていたなら、なんとかしてくれなかったんか?」

 「わかっていてもできるわけないだろう! もし出来るとしたら王位継承権を返上してもらって、なんとかするぐらいだな。どうせ本物の国王になれなかったしな!」

 「なんじゃい! 本物の国王じゃねえんかい! 俺は!」

 アルベルトは持っていた羽ペンをへし折っていた。

 「まあまあ怒りなさんな! しょうがねえだろう親父さんを無理やり追放して簒奪したんだからな。ネルディが要らん事をするから、ぶち壊したんだよ! 最初からわしんところに相談してくれたらマシだったし!」

 ボヌッチに肩をたたかれたアルベルトは何とも言えない表情を浮かべていた。

 「じゃあどうしたんだよ! おっさん!」

 「それはなあ、って考えても無駄だがあんたの親父さん、ユリウス二世にお願いして婚約を破棄してもらったさ。それに知っていたか?」

 「何を?」

 「サンドラの心の中に好意を寄せていた男がいたんだぞ! それを上手く使えばよかったんだ!」

 それを聞いたアルベルトの感情は激しく揺れ動いていた。
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