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ざまあねえな!

27 極刑!?(4)

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 庶民からすれば死刑というものは憂さ晴らしの面があった。絶対悪が滅ぼされる残酷な見世物であり、いま舞台に上がっている二人は打ってつけであった。また新たに国王に就任したレオからすれば悪の支配者からの解放者として、また正当な国王として宣伝する格好の機会であった。

 このような結果を招いたのは大多数の者からすればカルメンに心を奪われ彼女の父ネルディの稚拙なクーデターに乗じたアルベルトに全ての原因があると認識していた。だが、アルベルトからすればすべての躓きの原因はサンドだと思っていた。だからアルベルトの批判は新国王のレオではなく妹で要らないといって捨てたサンドラに向かっていた。

 「やい! サンドラ! お前は俺が捨てたんだ! だからといってこんな復讐ってありかよ! ほかの連中は綺麗だ賢いなどと持ち上げているが、本当は残酷で薄情な女だろ? そんなに悔しいのならなんかいったらどうか?」

 唯一行動の自由が許されている言葉でサンドラを罵ったアルベルトであったが、彼女は少し微笑んでいるかのようにみえた。まるでそれは人形のような造形物であった。心など表に出ることのない氷の微笑のようであった。それにますます怒りを露わにしたがそれも終わろうとしていた。死刑執行人が最後の仕上げを始めたからだ。

 この時のように火あぶり刑を執行するのは極まれであった。通常火あぶりは残虐なので内乱を企てた国事犯しか適用されなかった。もっともレオなどはアルベルトに反旗をあげ立場が逆転したが、反乱者のはずだった。反乱者といえども成功すれば問題ないわけだ。あとは汚名を着せてあの世に送ればいいだけだ。

 死刑執行人は公開処刑の場では黒装束で顔を絶対見せることはなかった。その姿はまさに死神であった。火あぶりにされる場合、勢いよく炎が上がるとすぐに気絶してしまうので、より残虐にするために弱い火力で行えるように少ない薪が用意されていた。徐々に二人をあぶり殺そうというわけだ。これが東方のとある帝国だと、体を徐々に切り刻んだり切り取ったりして徐々に殺すという凌遅刑があるという。

 アルベルトとカルメンの下に置かれた薪の周りにある藁に死刑執行人の手で火がつけられた。一気に藁は燃え上がったが火力は弱かったが徐々に増していった。二人は最初は煙たがったが茹だるような熱さに襲われていった。こうやって死んでいくんだな死ぬのは苦しいんだなとアルベルトが思った瞬間、意識が飛んだ。あの世ではなくこの世に!

 「どうだ? これがあんたらの未来さ!」

 老宰相のボヌッチの声で目を覚ましたアルベルトは隣を見ると、泡を吹きだして気絶しているカルメンがいた。

 「なにしやがったんだよ! 俺のカルメンのお腹の子に何があったらどうすんだよ! あれはなんなんだよ!」

 「なにって、いっただろう。わしの家に伝わる賢者の石を使ったんだよ。これを使えば現時点の未来を見せれるっていっただろ? これを使うとわしの寿命が5歳も減るんだから再々使えんがな」

 ボヌッチは賢者の石だという四角い石板を持ちながらそういった。どうも二人は少し先の運命を見せられていたようだ。

 「今見ていた通になるというんか? 確かなんだな」

 「ああ、そうさ。今までわしが使ったのは三度あるが二度まではその通りだった」

 「じゃあ一度はどうなったんだというんかよ?」
 
 「それは、忠告を受け入れてわしが言うとおりに行動してくれたから危険を回避できたんだ。ほかの二人は信じずに破滅してしまったがな」

 「なんだよそれ? ってことは俺たちはサンドラとその兄貴に殺されてしまうというんかい?」

 「そうさ! どうせ信じてくれんから賢者の石を使ったんじゃよ。お前さんたちは本当に楽天的なんだからな。いまのまま攻められても逃げても捕まる運命なのさ。許してくれるだとか、逃げればいいんだなんて考えないことさ。それを分からせるために見せたんさ」

 アルベルトは本当はボヌッチを殴り倒したかった。でも、今頼れるのは目の前の老人ぐらいしかいないのが実情だった。もしかすると信用してはいけないかもしれなかったが。

 「そうかい! わかったよ! 俺にどうすればいいんかというんだよ。降伏も逃亡もできないなら!」

 アルベルトはそういいながらカルメンの身体をさすっていた。こころなしか少しお腹が大きくなったような気がした。
 
 「俺は・・・・カルメンと生き延びたい! 王族として名誉ある死よりも、庶民以下になってもこのお腹の子と暮らしたいんだ! 教えてくれないか! おっさん!」

 ボヌッチはそれを聞くとニヤリとした表情を浮かべた。それは彼が最後の戦いに臨む興奮が表情に出ていたのかもしれなかった。

 「おっさんとは、失礼なといいたいがまあいいだろうな。わしにも考えはある。それでこの体は滅びてもお前さんらを助けてやるからな」

 ボヌッチの気持ちは高揚しているようであったが、起死回生の策でもあるのだろうか? 不安で仕方のないアルベルトであった。

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