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ざまあねえな!

26 極刑!?(3)

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 苦しむカルメンを見たアルベルトはすぐ彼女のもとに行きたいともがいたが無理であった。同じように柱に縛られていたからだ。柱へはチェーンのような鉄縄で縛りつけられ簡単に離すことはできなかった。それが意味するのは死ぬまでこのままだと。

 群衆からは早く極刑にせよという声が巻き起こっていた。群衆からすれば上級国民の最高位にあった元王族が獣のように殺される姿を望んでいた。ここには命が奪われることを憐れみるような慈悲を持つような者はいなかった。いるのは、ただ残酷な見世物を欲する大衆であった。

 柱に縛られ無理やり息を吹き返されられたカルメンはひどい顔をしていた。元々大して美人ではなくどちらかといえば好きになれるのは人を選ぶような良く言って個性的な顔をしていた。その顔かたちに心を奪われたのがアルベルトであった。

 「美人は三日も見れば飽きるが、そうでもない女は一生飽きることはない」という言葉があるが、アルベルトにとってほぼ完璧すぎるサンドラよりもカルメンに当てはまる言葉であった。アルベルトが側近の者にカルメンが好きだと告白したところ十人中九人までが疑問符に満ちたような顔をしていたように、何故あんなのが好きなのかと噂されていた。もしかすとアルベルトの感覚は麻痺しているのではないか? とさえいわれていた。

 そんな陰口があってもアルベルトからすれば最高の女はカルメンだった。顔は整ってないといわれたり身体は均整がとれてなく、腰や胸が無駄に大きすぎるといわれても彼女でなければならなかった。だからサンドラを排除したかっただけなのに・・・結果は極刑の舞台に二人とも立たされていた。

 死刑執行人は柱に縛られた二人の猿轡をはずしたうえでこう言った。最期に言い残したいことがあれば話せばいいと。でも、本当は火あぶりされる際に断末魔の叫びをあげさせることが目的であった。カルメンは疲労困憊と精神的消耗の為に息も絶え絶えであったがアルベルトは大声を出した。カルメン大丈夫かと? するとカルメンは精一杯笑顔を浮かべた。

 その笑顔はアルベルトが好きだったものであった。アルベルトはカルメンの悪い噂を数多く聞いていた。サンドラを陥れるためにウソを振りまいているとか、わざと振り向いてもらうためにアルベルトの前で演技しているとかだ。それらを耳にしてもアルベルトの彼女に対する想いは揺るぎなかった。元々サンドラは嫌だったからだ。それに比べカルメンは自分だけの天使であった。

 群衆からは明らかに軽蔑する罵声が飛んでいた。この二人が恋に狂ったせいで王国は無茶苦茶になったと認識していたからだ。産業革命が起きてクモオ公爵よる蒸気機関や製鉄技術の導入により、ヴァルディアン王国の勢力は大きく変わっており、王国の実権は交代しようとしていた。だから王家とクモオ公爵家を婚姻によって結びつきを強めることで秩序を保とうとしていたのに、全てアルベルトとカルメンがぶっ壊したと。二人の恋愛が国を滅亡させたというわけだ。
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