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ざまあねえな!
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アルベルトはこの時全てを失う瀬戸際だった。国王の地位やカルメンだけでなく命さえも。婚約破棄と国王即位とカルメンとの結婚で全てを手に入れたのも束の間、全て裏目に出ていた。これに対し衆目は規則や慣習や道徳を全て捻じ曲げた報いだ自業自得だと嘲笑の声をあげていた。最も王宮が弾薬庫の爆発事故で大破したのも王都が洪水で壊滅したのは偶然であり、ネルディをそそのかした何者かも想定していたことでなかった。そそのかした何者からすれば陰謀の証言者になるはずだったネルディが黄泉の国に退場してくれたのは都合よいことでったが。
残されたアルベルトとカルメンは今やただの馬鹿な若夫婦にすぎなかった。結婚したいのであれば誰かの迷惑のかからない方法はいくらでもあった。アルベルトが第一王子の地位を捨てネルディ子爵家の婿養子になってもよかった。王家には第二王子のパウロがおり、アルベルトよりも聡明だという評価があったから問題はさほどでもなかったといえる。だが、いまや残された手段は少なくなっていた。
「正直な事をいうとな、陛下も王妃もわしんところに来てくれたらこんなことにならんかったんじゃよ。よりによってネルディのところに相談するからこんなどうしようもないことになったんじゃよ」
ボヌッチは禿げ上がった頭皮に何度も手を当てながら顔をしかめていた。彼もまた自分が王国最後の宰相になると覚悟を決めたようであった。まさにアルベルトによって王国の幕が引かれようとしていた。領土を失い国王直轄領もまた浸食されつつあった。王国は周辺諸国によって分割されようとしていた。
「で、俺に何をしろというんだい? 逃げるという選択肢はないのか?」
アルベルトはそういったがボヌッチは首を横に振った。
「逃げたって無駄だ。帝国も侵略行為をする口実として陛下に愚行をやらせたんだ。そんな愚行をやらかした者を見逃すはずはないさ。もし、わしだったら無条件降伏させるか、さもなくば攻め殺すかさせるはずだ。まあ無条件降伏すれば王国を安堵する条件として国王を僭称したアルベルト第一王子と王妃を僭称したネルディ子爵令嬢カルメンは公開処刑しろとでもいうかもしれないな」
処刑、その言葉にアルベルトは震え上がった。まだ18歳になったばっかり、結婚したばっかりだというのに死ぬのは嫌だ! それはカルメンも一緒であった。まあ若いのに刑場の露となって消えたくはなかった。
「ちょっと、まってくれないか? 回避する方法ぐらいはあるだろ? 宰相!」
「ああ、あるさ。でも失敗する可能性が高いかもしれない。心配するなわしも失敗したら自死を強制されるだろうから、その時は一緒じゃ。だから協力してくれんか?」
ボヌッチは鬼気迫る表情で二人に語りかけた。
残されたアルベルトとカルメンは今やただの馬鹿な若夫婦にすぎなかった。結婚したいのであれば誰かの迷惑のかからない方法はいくらでもあった。アルベルトが第一王子の地位を捨てネルディ子爵家の婿養子になってもよかった。王家には第二王子のパウロがおり、アルベルトよりも聡明だという評価があったから問題はさほどでもなかったといえる。だが、いまや残された手段は少なくなっていた。
「正直な事をいうとな、陛下も王妃もわしんところに来てくれたらこんなことにならんかったんじゃよ。よりによってネルディのところに相談するからこんなどうしようもないことになったんじゃよ」
ボヌッチは禿げ上がった頭皮に何度も手を当てながら顔をしかめていた。彼もまた自分が王国最後の宰相になると覚悟を決めたようであった。まさにアルベルトによって王国の幕が引かれようとしていた。領土を失い国王直轄領もまた浸食されつつあった。王国は周辺諸国によって分割されようとしていた。
「で、俺に何をしろというんだい? 逃げるという選択肢はないのか?」
アルベルトはそういったがボヌッチは首を横に振った。
「逃げたって無駄だ。帝国も侵略行為をする口実として陛下に愚行をやらせたんだ。そんな愚行をやらかした者を見逃すはずはないさ。もし、わしだったら無条件降伏させるか、さもなくば攻め殺すかさせるはずだ。まあ無条件降伏すれば王国を安堵する条件として国王を僭称したアルベルト第一王子と王妃を僭称したネルディ子爵令嬢カルメンは公開処刑しろとでもいうかもしれないな」
処刑、その言葉にアルベルトは震え上がった。まだ18歳になったばっかり、結婚したばっかりだというのに死ぬのは嫌だ! それはカルメンも一緒であった。まあ若いのに刑場の露となって消えたくはなかった。
「ちょっと、まってくれないか? 回避する方法ぐらいはあるだろ? 宰相!」
「ああ、あるさ。でも失敗する可能性が高いかもしれない。心配するなわしも失敗したら自死を強制されるだろうから、その時は一緒じゃ。だから協力してくれんか?」
ボヌッチは鬼気迫る表情で二人に語りかけた。
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