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ざまあねえな!

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 ボヌッチはそのとき78歳で、もう三十年も宰相の座にあったが、アルベルトからすれば物心ついた時から国王たる父親にとやかく口出しするウザい存在だと認識していた。だから宰相でなくなってうれしかったが、いまでは頼るのは目の前の口が悪くやかましい老人しかいなかった。

 「あたりまえじゃん! わざわざ出来が良すぎる婚約者を追い出して結婚したんだからカルメンと! もう国王でなくなっても構わないから一緒に暮らしたいんだ!」

 アルベルトの言葉にカルメンは感激の涙を流していた。それを見たボヌッチはしばし考えてから話を切り出した。

 「そうか! もし、ここで元の鞘に戻る、つまりはサンドラ嬢を呼び戻すなんて薄情な事を言うのなら本当に見捨てて適当な事をするつもりだった。まあ二人がそのつもりなんなら策はないわけではない。でも約束してくれないか? もう王族にも貴族にもましてや元の生活は全て捨てることを! そうしなければ二人とも命はないからな。少々あぶない橋を渡るからな」

 それは何を意味するのか二人はぼんやりながらも分かった。確かに領土の大半を失った君主の命運は月欠けているんだと。アルベルトはこう思った、ざまあねえな! と。カルメンと結婚するために多くのモノを失いつつあると。

 「わかった! で、なにをすればいいんだよ?」

 「そうよ! 陛下が陛下でなくなっても一緒にいられるならいいから、早く教えてよ!」

 二人はボヌッチに詰め寄った。その時ボヌッチの見事に髪の毛が全滅した頭皮をまじまじと見ていた。

 「そうか、やってやろうじゃないか。実はな王妃陛下よ、君の父親には言ったんだが今回のクーデターは罠だからやめろっていっていたんだ。これは隣国の帝国皇帝の陰謀だと。だってそうじゃないか? サンドラを婚約破棄してすぐクーデターが手際よく成功するなんておかしいだろ?」

 その言葉に二人のように賢くなくてもおかしい事に気付いた。

 「ちょっとまて、すると俺が婚約破棄するのは計算ずくだったというんかい! どうしてそんなことが言えるんだよ!」

 アルベルトは何となく気付いた。婚約破棄の前に両親が言うことを聞いてくれないので大喧嘩したけど、そのあと弟や妹と一緒に悪魔島に送られるなんて考えもしなかったことだったからだ。

 「それはな、わしの推理だ! なんとなく耳に入っていたんだ。ネルディに怪しい外国人と談合をしているというのを。それと聞くがサンドラは婚約破棄の後どうなった?」

 「それは・・・国外追放したから馬車に乗って川に落ちて死んだと聞いているが、それがどうした?」

 それを聞いたボヌッチはなるほどという顔をした。

 「きっとサンドラは生きているに違いないなあ。クモオ公爵の事だから娘を救い出す偽装をしていたはずだ。だって国外追放なら普通は官吏が隣国との境まで連れ出すのが普通だろ? なんで行かせたんだ一人で?」

 「それは・・・聞いたんだよ途中で密かに暗殺する刺客を放っていると。たしかあれは・・・宮内尚書のバルディがいっていたな」

 「バルディか? あいつはどこにいる?」

 「そういえば王宮の弾薬庫が爆発してから姿みていないなあ。なにも知らねえ!」

 「きっとバルディはクオモ公爵とグルだ! 今の王朝になりかわりクオモ家が就くための陰謀に加担したんだ!」

 サンドラの実家のクオモ家が王国を乗っ取ろうとしている? いきなり何を言い出すんだと驚く二人であった。
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