上 下
19 / 43
ざまあねえな!

19

しおりを挟む
 アルベルトとカルメンは外ずらだけ見れば不釣り合いな夫婦であった。そこそこ美男子なアルベルトと見方によればかわいいかもしれないふっくらとした平凡な娘のカルメン。そんな二人が夫婦なのは大抵の人々からすれば本人たちが幸せなら別に結構なことではないかといえた。でもそれが数多くの人々を不幸にする国家的危機を招いているのが現実だった。

 アルベルト一行を乗せた馬車は脱出したがどこにも行けず立往生をしていた。あまりにも激しい暴風雨で視界を奪われたからだ。御者はこれ以上の移動は危険と判断し、旧クオモ邸の敷地内にある庭園に留め置いていた。その日の暴風雨は半端なものではなく王都の低地は浸水していた。

 「大丈夫かカルメン!」

 アルベルトはカルメンを抱きしめていた。それはまるで暖を取るために身体を寄せ合っている様であった。その時、カルメンの鼓動と体温を感じていた。

 「大丈夫です、それよりも・・・」

 カルメンは園遊会の出来事から今までのことを思い出して後悔しはじめていた。本当にこれでいいのかと。自分がアルベルトをモノにするためにした行いが、悪い方向に向かってしまったのかと。平凡なカルメンからすれば好きになった男がアルベルトだったのは偶々だった。平凡なら身分差も婚約者がいても叶わぬ恋で終わるだけの事のはずだった。でも、偶然父親が権力欲があって娘に王位継承者がぞっこんなのを奇貨としてクーデターを起こし成功したので、こうして夫婦になれた。でも、それは・・・

 「わたしたちって大丈夫なのですか? カルメンと一緒になってよかったのですか?」

 その言葉にアルベルトはドッキとした。カルメンと一緒になるために彼女の父親の企みに加担して国王になったまではよかったが、急激に事態が悪くなっているのを。いくら無能なアルベルトでも最悪な事態なのは分かっていた。外患内憂といっていい状態を。周辺国から国王と承認されず、国内は離反の動きがある。おまけに弾薬庫の爆発によって王宮は破壊され政府機能は不全に陥っている。

 「それはな、答えは一つさ!」

 そういってカルメンを強く抱きしめたが、それは答えを言葉にできなかったためだ。言葉で言えば”もうどうしようもない、一緒にいるしかない”であった。国王夫妻としていられるのも時間の問題ではないかと思っていた。
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

王妃の仕事なんて知りません、今から逃げます!

gacchi
恋愛
側妃を迎えるって、え?聞いてないよ? 王妃の仕事が大変でも頑張ってたのは、レオルドが好きだから。 国への責任感?そんなの無いよ。もういい。私、逃げるから! 12/16加筆修正したものをカクヨムに投稿しました。

最愛の側妃だけを愛する旦那様、あなたの愛は要りません

abang
恋愛
私の旦那様は七人の側妃を持つ、巷でも噂の好色王。 後宮はいつでも女の戦いが絶えない。 安心して眠ることもできない後宮に、他の妃の所にばかり通う皇帝である夫。 「どうして、この人を愛していたのかしら?」 ずっと静観していた皇后の心は冷めてしまいう。 それなのに皇帝は急に皇后に興味を向けて……!? 「あの人に興味はありません。勝手になさい!」

【完結】もう無理して私に笑いかけなくてもいいですよ?

冬馬亮
恋愛
公爵令嬢のエリーゼは、遅れて出席した夜会で、婚約者のオズワルドがエリーゼへの不満を口にするのを偶然耳にする。 オズワルドを愛していたエリーゼはひどくショックを受けるが、悩んだ末に婚約解消を決意する。だが、喜んで受け入れると思っていたオズワルドが、なぜか婚約解消を拒否。関係の再構築を提案する。その後、プレゼント攻撃や突撃訪問の日々が始まるが、オズワルドは別の令嬢をそばに置くようになり・・・ 「彼女は友人の妹で、なんとも思ってない。オレが好きなのはエリーゼだ」 「私みたいな女に無理して笑いかけるのも限界だって夜会で愚痴をこぼしてたじゃないですか。よかったですね、これでもう、無理して私に笑いかけなくてよくなりましたよ」

私の知らぬ間に

豆狸
恋愛
私は激しい勢いで学園の壁に叩きつけられた。 背中が痛い。 私は死ぬのかしら。死んだら彼に会えるのかしら。

【短編】復讐すればいいのに〜婚約破棄のその後のお話〜

真辺わ人
恋愛
平民の女性との間に真実の愛を見つけた王太子は、公爵令嬢に婚約破棄を告げる。 しかし、公爵家と国王の不興を買い、彼は廃太子とされてしまった。 これはその後の彼(元王太子)と彼女(平民少女)のお話です。 数年後に彼女が語る真実とは……? 前中後編の三部構成です。 ❇︎ざまぁはありません。 ❇︎設定は緩いですので、頭のネジを緩めながらお読みください。

今更気付いてももう遅い。

ユウキ
恋愛
ある晴れた日、卒業の季節に集まる面々は、一様に暗く。 今更真相に気付いても、後悔してももう遅い。何もかも、取り戻せないのです。

あなたへの想いを終わりにします

四折 柊
恋愛
 シエナは王太子アドリアンの婚約者として体の弱い彼を支えてきた。だがある日彼は視察先で倒れそこで男爵令嬢に看病される。彼女の献身的な看病で医者に見放されていた病が治りアドリアンは健康を手に入れた。男爵令嬢は殿下を治癒した聖女と呼ばれ王城に招かれることになった。いつしかアドリアンは男爵令嬢に夢中になり彼女を正妃に迎えたいと言い出す。男爵令嬢では妃としての能力に問題がある。だからシエナには側室として彼女を支えてほしいと言われた。シエナは今までの献身と恋心を踏み躙られた絶望で彼らの目の前で自身の胸を短剣で刺した…………。(全13話)

真実の愛の言い分

豆狸
恋愛
「仕方がないだろう。私とリューゲは真実の愛なのだ。幼いころから想い合って来た。そこに割り込んできたのは君だろう!」 私と殿下の結婚式を半年後に控えた時期におっしゃることではありませんわね。

処理中です...