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ざまあねえな!
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しおりを挟む アルベルトは顔は平均よりも上で体格は整っており、女の子に好かれておかしくなかった。唯一愛や恋の虜にならなかったのは、元婚約者のサンドラぐらいなものであった。サンドラが夢中になっていた事は産業技術、特に近代的な製鉄事業であった。おかげでクオモ公爵家は伝統的な農民から受け取る作物や地代などを凌駕する収入を得ていた。そんなサンドラが話す技術だの経済だのといった話題に全くついていけなかった。
話がかみ合わないし趣味も合いそうもない婚約者を追放して手に入れたのはカルメンだった。一緒にいるだけで心が癒される、あんな婚約者と比べたら天使だと感じていた。でも、いま不満があるのは夫婦として過ごす寝室だった。あまりにもひどかった。
旧クオモ邸は王宮のそばにあって王都の通りに出ることなく行く事ができた。それで弾薬庫の爆発により壊滅的な被害を受けた王宮から一時避難していた。元々クオモ邸の建物群は質素な作りであったが、アルベルトの王宮改装遂行のため、壁の石材やレンガを崩したところであった。だから木造の今にも倒壊しそうな離れ夫婦の寝室に指定するほかなかった。
その晩は激しい嵐であった。離れは相当シロアリなどの被害を受けているらしく建物はグラグラ揺らいでいた。こんなことならカルメンの実家の方がましだった。もっとも国王が宰相の屋敷に居候するなんて情けない事になる。だから我慢していたが・・・
「陛下、いいかげんここにいるのも恐ろしいですわ」
ゴロゴロしながらカルメンは寄り添ってきた。新婚だから甘いものを想像していたけど、現実は悪い方向にいっていた。どんどん部屋の程度は低くなるし、実効支配している領土も減っている。それがアルベルトの悩みであったが、ここでは国王としての事は考えたくなかった。仕事を寝室に持ち込みたくなかった。しかし・・・部屋は我慢の程度を超えていた。
「わかった、とりあえず大庭園にでも仮設の寝所を作らせよう」
アルベルトは自分で言ったが出来ないかもしれないと思っていた。でも、いやそうにしているカルメンをなだめるにはそれしかないと思った。
「それはいいわ! でも、やっぱり怖いよ」
建物の軋む音はますますひどくなっていた。もしかすると倒壊するかも? そうおもっていたら崩れた。建物ではなく天井が! しかも天井から人も落ちてきた。
「な、なにものか? 曲者!」
アルベルトは大きな声を上げた。そいつは・・・この廃屋を占有していたホームレスの男だった。その男のそばには真新しい本のようなものが落ちていた。
話がかみ合わないし趣味も合いそうもない婚約者を追放して手に入れたのはカルメンだった。一緒にいるだけで心が癒される、あんな婚約者と比べたら天使だと感じていた。でも、いま不満があるのは夫婦として過ごす寝室だった。あまりにもひどかった。
旧クオモ邸は王宮のそばにあって王都の通りに出ることなく行く事ができた。それで弾薬庫の爆発により壊滅的な被害を受けた王宮から一時避難していた。元々クオモ邸の建物群は質素な作りであったが、アルベルトの王宮改装遂行のため、壁の石材やレンガを崩したところであった。だから木造の今にも倒壊しそうな離れ夫婦の寝室に指定するほかなかった。
その晩は激しい嵐であった。離れは相当シロアリなどの被害を受けているらしく建物はグラグラ揺らいでいた。こんなことならカルメンの実家の方がましだった。もっとも国王が宰相の屋敷に居候するなんて情けない事になる。だから我慢していたが・・・
「陛下、いいかげんここにいるのも恐ろしいですわ」
ゴロゴロしながらカルメンは寄り添ってきた。新婚だから甘いものを想像していたけど、現実は悪い方向にいっていた。どんどん部屋の程度は低くなるし、実効支配している領土も減っている。それがアルベルトの悩みであったが、ここでは国王としての事は考えたくなかった。仕事を寝室に持ち込みたくなかった。しかし・・・部屋は我慢の程度を超えていた。
「わかった、とりあえず大庭園にでも仮設の寝所を作らせよう」
アルベルトは自分で言ったが出来ないかもしれないと思っていた。でも、いやそうにしているカルメンをなだめるにはそれしかないと思った。
「それはいいわ! でも、やっぱり怖いよ」
建物の軋む音はますますひどくなっていた。もしかすると倒壊するかも? そうおもっていたら崩れた。建物ではなく天井が! しかも天井から人も落ちてきた。
「な、なにものか? 曲者!」
アルベルトは大きな声を上げた。そいつは・・・この廃屋を占有していたホームレスの男だった。その男のそばには真新しい本のようなものが落ちていた。
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