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ざまあねえな!

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 アルベルトは動揺していた。隣国の皇帝から国王と認められなかったばかりか、国内でも離反の動きがあることに。西ヴェルデディアはクオモ伯爵領の中心地であった。従来は農業は振るわなかったが、近年は鉄鉱石や石炭などの鉱脈が発見され大規模な鉄鋼業などが発展しており、急激に発展している重要地域であった。そうなったのもクオモ伯爵当主であるサンドラの父の功績が大きかった。

 「宰相! たしかそちに拝領させたはずだぞ! 接収したはずだろう、軍の移動も認めたはずだぞ」

 アルベルトの頭の中では「ネルディ公爵領」の版図の一部なのになぜそうなるのか理解できなかった。軍隊には多額の報酬を渡して自分の側に従っているはずなのに、なぜなんだ! そう思うのはネルディも同じだった。軍人なんて金さえ与えれば従うはずなのになぜだと。

 「そ、それは・・・なぜでしょうか? クオモの本拠地へは第五師団を派遣していたのですが、そういえば接収したという報告は届いておりません。どうしたものか?」

 ネルディはそうごまかしていたが、薄々気付いていた。たぶん、第五師団は寝返ってしまったんだと。事情はわからないが、なんとなくそうなってしまったんだと。王都を出発してから全く報告がなかったし、それに別方面に展開しているはずの第三師団から先に報告が届くというのはおかしかった。

 「とりあえず・・・俺はなにをすればいいんだ?」

 アルベルトはそういったが、何をすればいいのか本当になにもわからなかった。国王になれば全てうまくいくと思ったのに、実際は・・・それにしても? 彼は頭の中で考えていたが答えは出なかった。ネルディ派を頼みにしておれば何とかなるはずだし、そう思っていたが違っていたのだと気づいていた。

 「それは・・・とりあえず様子を見ましょう」

 ネルディはそうなだめたが、彼もまた名案はなかった。国王を押さえればなんとかなるし、反対派を弾圧しても周辺国は面倒なことにならないようにするため介入してこないだろうと都合よく思っていたが、事態は想像していたものと違っていたものになっているようだ。

 「わかった・・・じゃあ、俺はカルメンと一緒にいる、なにか状況に変化があれば報告してくれ」

 アルベルトは執務室を後にした。王宮内を出ると弾薬庫の大爆発によって破壊された光景が広がっていた。惨事によって死傷者が多数出てしまい、王宮にある政府機関の機能はマヒしていた。だからうまくいかなくなったんだろうというのは理解できた。その時、また激しい雨が降り始めた。あの日、園遊会が、サンドラとの婚約破棄を実行してからというもの、断続的に豪雨に見舞われるようになった。そのときアルベルトは突如こう叫んだ。

 「おい! サンドラ! お前は死んでアメフラシの悪魔にでもなったというのか! いいかげんにしろ! 雷をおとすな、ボケ! はやく地獄へ行きやがれ、俺の邪魔なんぞせずに!」
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