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新婚生活だというのに!

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 結婚するのが目的の場合、そのあとの事は何にも考えていなかった。そういう場合は結婚は失敗だったと後悔するであろうというのは誰でも想像できることである。アルベルトは要らない婚約者から逃避しようとしてカルメンという貴族出身以外は平凡な娘を伴侶として選んでしまった。それにより大きな代償を払わないといけないとは考えていなかった。

 ヴァルディアン王国は急速に崩壊へと進んでいた。そのことを当事者は気付いていなかったが、前兆といえる出来事が発生した。王宮の弾薬庫が大爆発し、大きな被害を受けた。爆発の原因ははっきりしなかったが、王宮の中央にそびえる尖塔に落雷があり、それが引火したのではないかといわれていた。しかし人々はこう噂をした。

 「あの大爆発は、婚約破棄され非業の死を遂げたサンドラの怨念が引き起こしたのさ、きっと」

 「神様も歓迎していないのさ。あれだけ素晴らしい婚約者を追放して迎えたのが華もない娘じゃ。だってそうだろう、結婚式で聖歌隊も大司教もいい加減な事をしていたし、おまけに尖塔から鐘が転がり落ちるなんてさ。おまけに、婚礼パレードは土砂降りだし、次は落雷だってさ。ついていないという話じゃねえしな」

 「ざまあないさ、あんな親不孝で自己中心的な国王なんか。一層の事、隣国に併合されてしまえばいいんだよ、この国は」

 「そうさ、そうさ!」

 どれもこれもアルベルトの行いが悪いから起きた事で、まさに身から出た錆さ! という反応であった。ただ、弾薬庫の爆発で王宮内にいた者が数多く犠牲になったのおは気の毒だとされた。あんな国王のせいだ! と。


 「カルメンは無事なのか?」

 執務室で爆風に吹き飛ばされたアルベルトが尋ねたのはカルメンの安否だった。執務室がある建物の煉瓦壁は崩落し、外は丸見えになっていた。アルベルトとネルディはかすり傷で済んだが、外の風景は一変していた。王宮の半分近くが瓦礫の山になっていた。弾薬庫があった場所には大きな窪みが出来ていた。

 「それですが、カルメン王妃はお買い物に行っていたようです。使いの者が戻ってきました。国王は無事ですかと」

 「おお!」


 どうやらカルメンは無事だったようだ。とりあえずネルディは救済活動を指示したが、ふたりとも大変な事になったことに呆然としていた。

 「これって、まさかサンドラの恨みか?」

 アルベルトはそういったが、サンドラに責任をおしつけたいと思って言ったことであった。

 「お戯れを! 報告していなかったのですが、師団の方からサンドラらしき女の死体を見つけたという報告がありました。ただ発見した漁民によれば損傷が激しくってすぐ火葬にしたそうで、証拠は傷んだドレスだけだそうです」

 ネルディはそういったが、サンドラの死に疑問を持っていた。でも、ここは操り人形に出来る娘婿をなだめるにはそういうしかないといった。

 「ドレスか・・・こんなに気になるのなら、婚約破棄した後に監獄にでも閉じ込めてから殺せばよかった」

 アルベルトは要らなくなったから他のだれのものにならないように消すべきだったと後悔していた。
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