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結婚式!
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結婚式が国王どころか下級貴族が挙行するレベルすら達していないにもかかわらず、あまり気にしていなかった二人でも目の前に転がっていた銅像を見て寒気がした。その銅像の名前はカルメンという名を持つ古い時代の人物像だった。
「ちょっとなんだよ! わが妻に対する当てつけかよ! わざわざこんなことをした奴を探し出せ!」
アルベルトは怒り心頭であった。このカルメンの名を持つ銅像は王宮と大聖堂の間に置かれていたもので、大聖堂の前に何らかの意図があってそうやったのだと、鈍感なアルベルトも気が付いていた。その怒りに対しカルメンの父であるネルディがなだめに入った。
「探します! でも、最後まで式をしましょう! 終わりませんから!」
ネルディはそういって、さっき中途半端に終わった夫婦の誓いをやり直しましょうといった。
「わかった・・・探せよ! 探して罰せよ!」
アルベルトは仕方ねえなあと思ったが、なぜこのようなことが起きたのかの理由を考えることはなかった。国王になったのだから、この国では全知全能の神に等しい存在なんだから努力しなくても治められると誤解していた。傲慢かつ自己中心的な性格が悪化し取り返しがつかないことになるという自覚もなかった。
「アルベルトとカルメンの二人は、病めるときも、健やかなるときも、愛をもって、生涯お互いに支えあうことを誓います」
大司教の前で宣誓した二人であったが、それを感動的なものだと思った者はほとんどいなかった。二人の間はともかく王国の大半の国民から嫌われていたからだ。もし世論調査というものが存在すれば驚くほど低評価な数値が出るのは間違いなさそうであった。結婚式はうまくいったとは言えない状況であった。それでも、二人は満足のようであった。
銅像の残骸を片付けたあと、大聖堂を出た二人は王宮までお披露目のパレードに臨んだ。だがパレードを見た人々はあまり多くなかった。激しい雷雨が動員されたサクラの観衆を散り散りにさせた。雷雨を耐えてまで見たいとは思っていなかったからだ。これが国民的人気があったサンドラであったら全く別だといえた。人々は未来の国王よりも未来の王妃が好きであり、その存在が消えたことで絶望を感じていた。なんで、カルメンのような娘が王妃なんだ! 間違っている!
二人は、あの園遊会が開かれていた大庭園では大宴会が行われるはずであったが、豪雨によって用意されていた料理がダメになったため中止になり、二人はがっかりした。この時、人々の間でこうささやかれていた。無残な死を迎えたサンドラの呪いだと。そしてこういった。ざまあねえな! と。人々の心は国王となったアルベルトから離れていた。
そんな陰口がアルベルトの耳に届いたとき、アルベルトは自分の行いを改めようとはおもわなかった。それがさらなる酷い目に遭うことになろうとは、想像すらできないほど愚か者であった。結婚式は王国にとって終わりの始まりとなった。
「致し方ないなあ、披露パーティーは中止だ! 今日はもういい!」
アルベルトはカルメンの手を引いて自室へと向かっていた。現実逃避する先は他者からすればどうでもいい二人だけの世界だった。国王と王妃という自覚が全くない二人にとっての楽園だった。
「ちょっとなんだよ! わが妻に対する当てつけかよ! わざわざこんなことをした奴を探し出せ!」
アルベルトは怒り心頭であった。このカルメンの名を持つ銅像は王宮と大聖堂の間に置かれていたもので、大聖堂の前に何らかの意図があってそうやったのだと、鈍感なアルベルトも気が付いていた。その怒りに対しカルメンの父であるネルディがなだめに入った。
「探します! でも、最後まで式をしましょう! 終わりませんから!」
ネルディはそういって、さっき中途半端に終わった夫婦の誓いをやり直しましょうといった。
「わかった・・・探せよ! 探して罰せよ!」
アルベルトは仕方ねえなあと思ったが、なぜこのようなことが起きたのかの理由を考えることはなかった。国王になったのだから、この国では全知全能の神に等しい存在なんだから努力しなくても治められると誤解していた。傲慢かつ自己中心的な性格が悪化し取り返しがつかないことになるという自覚もなかった。
「アルベルトとカルメンの二人は、病めるときも、健やかなるときも、愛をもって、生涯お互いに支えあうことを誓います」
大司教の前で宣誓した二人であったが、それを感動的なものだと思った者はほとんどいなかった。二人の間はともかく王国の大半の国民から嫌われていたからだ。もし世論調査というものが存在すれば驚くほど低評価な数値が出るのは間違いなさそうであった。結婚式はうまくいったとは言えない状況であった。それでも、二人は満足のようであった。
銅像の残骸を片付けたあと、大聖堂を出た二人は王宮までお披露目のパレードに臨んだ。だがパレードを見た人々はあまり多くなかった。激しい雷雨が動員されたサクラの観衆を散り散りにさせた。雷雨を耐えてまで見たいとは思っていなかったからだ。これが国民的人気があったサンドラであったら全く別だといえた。人々は未来の国王よりも未来の王妃が好きであり、その存在が消えたことで絶望を感じていた。なんで、カルメンのような娘が王妃なんだ! 間違っている!
二人は、あの園遊会が開かれていた大庭園では大宴会が行われるはずであったが、豪雨によって用意されていた料理がダメになったため中止になり、二人はがっかりした。この時、人々の間でこうささやかれていた。無残な死を迎えたサンドラの呪いだと。そしてこういった。ざまあねえな! と。人々の心は国王となったアルベルトから離れていた。
そんな陰口がアルベルトの耳に届いたとき、アルベルトは自分の行いを改めようとはおもわなかった。それがさらなる酷い目に遭うことになろうとは、想像すらできないほど愚か者であった。結婚式は王国にとって終わりの始まりとなった。
「致し方ないなあ、披露パーティーは中止だ! 今日はもういい!」
アルベルトはカルメンの手を引いて自室へと向かっていた。現実逃避する先は他者からすればどうでもいい二人だけの世界だった。国王と王妃という自覚が全くない二人にとっての楽園だった。
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