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結婚式!
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クーデターで国王に即位後、アルベルトは昼間はネルディの操り人形として国政を行い、夜はカルメンとの甘い夫婦生活に耽っていた。その時がアルベルトとカルメンにとって人生で最も幸福な時間であったといえる。障害を乗り越えて結ばれたのだから、ようやく幸せになれると思っていた。これからの人生はバラ色だと楽天的に考えていた。
結婚式の朝も二人は他者が直視できないような露われもない姿で寝台の上で抱き合っていた。二人とも18歳で若さで無限に体力があるように思って契りにいそしんでいた。でも一週間も毎晩であったら疲労感を感じていた。でも、そんな気怠さも幸せだと思っていた。
「それでは着付けをいたしましょう」
カルメン専属の使用人たちは婚礼衣装を用意していた。本来、アルベルトの王太子としての婚儀はサンドラが成人を迎える18歳になってから一週間経過した二か月後に予定されていた。そのためサンドラが婚礼時に着用する衣装は制作されていたが、そんなのは拒否したので、そのままバラバラに裁断された。
その代わり用意されたカルメンの衣装は王宮内の衣装部屋にあった、歴代の王妃のそれを寄せ集めて制作された。そのため年代がチグハグニなり純白ではなく古色を帯びていた。それにはカルメンもがっかりしたがサンドラの「お古」よりましだと考え直していた。
使用人たちは笑顔であったが内心がっかりしていた。女神のようなサンドラのかわりに、そこらへんの使用人でいてもおかしくないような平凡な娘の着付けをしていることに。しかも処女じゃないのに純白の花嫁衣裳なんて・・・
カルメンの着付けが行われている頃、王宮に隣接する王都大聖堂では、アルベルトの即位式が行われた。アルベルトを支持する貴族はどちらかといえば守旧派で、改革を恐れ既得権益を確保したいという保守的な主張をしていた。だがアルベルトの即位式は歴代のものと違い相当簡素化されたもので、支持者が唖然としてしまった。理由は準備が間に合わないのは省略したのと、カルメンとの婚礼に費用の大半を費やしてしまったためであった。
「朕は国王である! この国の為に生涯をささげることを神の前で宣誓する!」
アルベルトの声が大聖堂に響いたが、参列者が極端に少なかったため、壁面からの反響音の方が大きかった。それは宰相ネルディによって王族や貴族が粛清されたり、王国を見限って国外逃亡しため、即位式は園遊会の出席者の一割もいなかった。大聖堂はまばらにしかいなかった。まるでアルベルトの行く末を暗示しているかのようであった。
「宰相、なんだ参列者が少なすぎるぞ!」
アルベルトはさすがに不満だとおもったが、ネルディはニヤニヤしながらいった。
「陛下、婚礼の事を心配されているのですか? 大丈夫です。大勢の参列者がやってきますとも」
「それってどういうことだ?」
「まあ、窓から外を見てください」
アルベルトが外を見ると、大聖堂に入ろうとする人の列が長く伸びていた。
「国民も陛下の婚礼をお祝いするために並んでおります!」
ネルディの言葉にアルベルトは満足した。目の前の人々がカルメンと自分を祝福しているとうれしくなった。だが、その列はネルディが強制的に動員したサクラであった。大多数は嫌でしかたなかったが、それをアルベルトは気付くことはなかった。
結婚式の朝も二人は他者が直視できないような露われもない姿で寝台の上で抱き合っていた。二人とも18歳で若さで無限に体力があるように思って契りにいそしんでいた。でも一週間も毎晩であったら疲労感を感じていた。でも、そんな気怠さも幸せだと思っていた。
「それでは着付けをいたしましょう」
カルメン専属の使用人たちは婚礼衣装を用意していた。本来、アルベルトの王太子としての婚儀はサンドラが成人を迎える18歳になってから一週間経過した二か月後に予定されていた。そのためサンドラが婚礼時に着用する衣装は制作されていたが、そんなのは拒否したので、そのままバラバラに裁断された。
その代わり用意されたカルメンの衣装は王宮内の衣装部屋にあった、歴代の王妃のそれを寄せ集めて制作された。そのため年代がチグハグニなり純白ではなく古色を帯びていた。それにはカルメンもがっかりしたがサンドラの「お古」よりましだと考え直していた。
使用人たちは笑顔であったが内心がっかりしていた。女神のようなサンドラのかわりに、そこらへんの使用人でいてもおかしくないような平凡な娘の着付けをしていることに。しかも処女じゃないのに純白の花嫁衣裳なんて・・・
カルメンの着付けが行われている頃、王宮に隣接する王都大聖堂では、アルベルトの即位式が行われた。アルベルトを支持する貴族はどちらかといえば守旧派で、改革を恐れ既得権益を確保したいという保守的な主張をしていた。だがアルベルトの即位式は歴代のものと違い相当簡素化されたもので、支持者が唖然としてしまった。理由は準備が間に合わないのは省略したのと、カルメンとの婚礼に費用の大半を費やしてしまったためであった。
「朕は国王である! この国の為に生涯をささげることを神の前で宣誓する!」
アルベルトの声が大聖堂に響いたが、参列者が極端に少なかったため、壁面からの反響音の方が大きかった。それは宰相ネルディによって王族や貴族が粛清されたり、王国を見限って国外逃亡しため、即位式は園遊会の出席者の一割もいなかった。大聖堂はまばらにしかいなかった。まるでアルベルトの行く末を暗示しているかのようであった。
「宰相、なんだ参列者が少なすぎるぞ!」
アルベルトはさすがに不満だとおもったが、ネルディはニヤニヤしながらいった。
「陛下、婚礼の事を心配されているのですか? 大丈夫です。大勢の参列者がやってきますとも」
「それってどういうことだ?」
「まあ、窓から外を見てください」
アルベルトが外を見ると、大聖堂に入ろうとする人の列が長く伸びていた。
「国民も陛下の婚礼をお祝いするために並んでおります!」
ネルディの言葉にアルベルトは満足した。目の前の人々がカルメンと自分を祝福しているとうれしくなった。だが、その列はネルディが強制的に動員したサクラであった。大多数は嫌でしかたなかったが、それをアルベルトは気付くことはなかった。
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