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婚約破棄!

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 その日、園遊会の会場であった王宮の大庭園は真っ青で美しく気持ちいい空に覆われていた。この大庭園は手入れが行き届き整然として美しかった。しかし中央にある大舞台では、人々からすれば男女関係の混沌カオスが進行していた。

 アルベルトに寄り添っているカルメンは同じ18歳であるが、見た目は幼い少女のようだった。髪は黒くふっくらとした体形、それに評判になるような事をしたこともなく、アルベルトと同じ平凡な少女だった。貴族でなければごく普通の目立たぬ存在であったといえた。

 「サンドラ! さっきから首を横に振るだけで何にも申し開きをしないが、なんか言ったらどうか?」

 会場内にはアルベルトの怒号が響いていた。サンドラを断罪する声が。サンドラは胸に王族女子のみが付けることを許される蘭の花をかたどった勲章をつけ、浅い薄紫色のドレスを纏っていたが、その顔はヴェールで覆っていた、そのヴェールは貴族階級の子女が葬儀でつけるものであった。もしくは喪中の未亡人が着用する場合があった。

 想像力と他人に対する配慮の乏しい浅はかなアルベルトでさえその意図に気付き、さらに怒りがピークを迎えていた。そのアルベルトに寄り添うカルメンは対照的にニヤニヤしていた。繰り広げられている断罪ショーをざまあないねという思いであるかのように特等席で観覧しているようにもみえた。

 「殿下、簡単に言えばそちらのカルメン嬢にわたくしが悪評を流布し、嫌がらせしたというわけですよね。しかしおかしいですわ、さっきから証言者を何人も舞台に上げているのに、その人たちではなく全て殿下が糾弾の言葉をおっしゃっているではありませんか?」

 サンドラの美しい声が初めて会場に響いた。内容なともかく感情を押し殺して淡々という姿に対し人々が痛々しいと感じるしかなかった。

 「そうだ! お前はカルメンを陥れようとした! だからお前とは婚約破棄をする!」

 「わかりました! それにしてもこのことは国王陛下はご承諾されておられるのですか? わたくしとの婚約は勅許ですから、破棄されるには必要ではありませんか?」

 「承諾? そんなの必要ないさ! おやじのなんかは! もうすぐ俺が国王なんだからな!」

 アルベルトのその言葉に会場の者はどよめいていた。その言葉の意味することはまさか? そういえば園遊会が始まってから国王夫妻の姿を誰も見ていないし、今頃は舞台の上にいる予定のはずなのに代わりに断罪ショーになっている。一体全体どうなっているのか?

 「それはありえませんわ殿下! あなたは立太子を経ていないじゃありませんか? 法的手続きがまだですわ」

 「法的手続き? そんなの必要ねえさ。民衆に寄り添うといって甘ちょろい事をほざいている親父なんか国王の資格なんかねえさ!」

 アルベルトのその言葉の意味に人々は戦慄した。まさか国王を? 婚約破棄するために危害を与えたというのか? なんということだ! と。カルメンとの恋のために!
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