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婚約破棄!

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 その時17歳であったサンドラは誰もが認めるほど美しく賢かった。金髪碧眼で女神のように均等の取れた顔立ち、娘としては神々しく素晴しい子供の母になるのは間違いなしの身体を持っていた。また経済に明るく軍事的才能もあるため、男なら優れた宰相もしくは軍人になれるといわれていた。

 だが、そんな優れたサンドラは万能ではなかった。婚約者たるアルベルトと良好な関係を維持することは出来なかった、彼女が将来の国王の婚約者になったのは12歳であったが、その時から厳しいお妃教育を受けた。おかげで現在では歴史上最高の未来の王妃になれるのは間違いないといわれていた。しかし、アルベルトはそんな彼女を疎んじていた。アルベルトにとって要らない婚約者だと思っていたからだ。

 アルベルトは平凡な男で保守的な性格をしていた。その最たるものは男尊女卑であったわけだ。サンドラのように自分よりも評価が高く尊敬される女は邪魔でしかなかった。それに彼女とは最初から気に入らなかったし。そんなことは彼女も知っているはずなのに、義務的な二人で過ごす時間もいつもにこやかにしているのが嫌だった。


 園遊会が開催される朝、アルベルトはサンドラに一人で来るようにと通達を出した。それに応じてやってきた彼女が引きずり出されたのは婚約破棄を申し渡して断罪する場であった。

 「サンドラ! お前はここにいる子爵令嬢カルメンに酷い仕打ちをしただろ! 身に覚えあるだろう! 証人も大勢いるぞ! それに相違ないだろう!」

 アルベルトの怒気の籠った声が会場に響いていた。アルベルトはこれで要らなくなった婚約者を追放できると気分が高揚していた。一方のサンドラの顔はヴェールに覆われ表情を伺う事はできなかったが、人形のように微動だにしなかった。その時、群衆は恐ろしいイベントになると覚悟していた。国王が定めた婚約を王子が破棄するなんて前代未聞であったからだ。

 「おい! 申し開きしないのか? 認めるのだな?」

 その言葉にサンドラは首を左右に振った。

 「認めないだあ? それじゃあ言わせてもらおう。ここにいるカルメン嬢の悪口を言いふらしただろ。そして本人を直接イジメただろ。その事を実証しようじゃないか?」

 するとアルベルトの隣に近衛兵士が近寄って来た。この兵士が証言するように見えた。

 「ここにいる諸君! この者はサンドラがカルメン嬢に対し手を挙げたのを目撃したといっている。それに汚い言葉で言いふらしているのも! そんな女がこの国で王妃になっていいはずはない。だから私は国王になる前にこの女を除去しなければならない!」

 アルベルトの言葉に会場にいた者はヒソヒソ話を始めた。サンドラがそんな女って信じられないと。そしてアルベルトは一方的すぎるので、もしかするとカルメン側の主張を全面的に信じているのではないかと。これから大変な事が起きると。

 そう、アルベルトは好きな彼女は全面的に悪くなく信用できると思い込んでいた。嫌いなサンドラの事など頭になかった。自分よりも目立つ婚約者は邪魔で目障りだから。自分の嫁にするのならカルメンのような甘えさせてくれる女がいいと考えていた。

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