1 / 43
婚約破棄!
01
しおりを挟む
第一王子アルベルトは一大決心をしていた。父親である国王が定めたレールから逸脱することを。アルベルトには婚約者がいた。祖母が王女で現在はクモオ公爵家令嬢のサンドラだ。才色兼備でおまけに武術にも長けているという未来の王妃として申し分のない娘だった。
でもアルベルトは彼女に不満だった。あまりにも気が合わないのだ。第一王子とはいえ、国王と同じく平凡な自分と比べるとみじめになるのだ。彼女の方がなんでも目立ってしまうのだ。それを嫉妬というかもしれないが。
そんな彼がいま夢中なのはカルメンだ。カルメンは貴族出身でどこか小悪魔的な魅力があった。そんな彼女にアルベルトは夢中だった。少なくとも相思相愛だと確信していた。カルメンもぞっこんだと。そして心ばかりか身体さえも重ねてしまった。そのうえ、子供を授かってしまった。側妃制度のない王国であったため、アルベルトは彼女とお腹の子供のために恐ろしい決断をした。
その日、貴族だけでなく国内の豪商など上級国民たちが集う園遊会が王宮内の大庭園で開催されていた。華やかな衣装を纏った男女が思い思いの時間を過ごしていた。その日の主催者は当然国王夫妻だ、だから王族は全員出席していた。しかし、その裏では陰謀が進行していた。全てはアルベルトの企みに便乗したものであった。
アルベルトは18歳で、成人と認められる年齢になったので、もうすぐ王太子に推挙されるはずだった。その日アルベルトの横には婚約者サンドラではなくカルメンがいた。それに気づいた参加者たちからは何かが違うという言葉が漏れていた。一方のサンドラといえば誰にもエスコートされず一人で歩いていた。彼女の顔にはヴェールがかかっていて表情はわからなかったが、なにか異変が起きたのだと誰もが気付いていた。
会場中央の大舞台では場を盛り上げるための演奏者がいて華麗な音楽を奏でていたが、アルベルトがカルメンを連れて現れると演奏を止めてしまった。おかげで園遊会に集った人々の視線が集中することとなった。アルベルトの目の前にはサンドラが大舞台の下でいた。その場にいた者たちの全員がこれから何事かはじまるのがと固唾を飲み込んでいた。
「サンドラ! お前には失望した! よってお前との婚約を破棄する。かわりに横にいる子爵令嬢カルメンを婚約者とする!」
その言葉にその場の空気は凍り付いてしまった。なんと反応すればいいのかわからないからだ。園遊会に相応しくない行動だからだ、ここで婚約破棄をするなんて。アルベルトの思わぬ言葉に対しサンドラは少し間を取ってからしゃべり始めた。
「殿下、婚約破棄ですか。その前に理由をお聞かせいただけないでしょうか? このまま、分かりましたと身を引いてもいいですが、園遊会に来られている方に説明責任があると思いますがいかがですか?」
サンドラの口調はまさに次期王妃に相応しい堂々としたものだと誰もが感じていた。でも、それは過去のものだった。婚約破棄されたらただの公爵令嬢だから。誰もが美しいサンドラを捨て平凡なカルメンと婚約すると宣言したのか理由を知りたかった。たとえるなら駿馬から鈍牛に乗り換えるようなものだから。
「説明責任か? お前は分かっているだろう! でも次期国王として国民に説明する必要はあるな! ここにいる国民よ! このサンドラは断罪すべき悪女であるぞ! だから婚約破棄するのだ!」
その言葉に続く言葉を誰もが聞きたいと注目していた。だが、王宮内ではサンドラの父親らが国家を滅亡させる悪だくみを実行していた。
でもアルベルトは彼女に不満だった。あまりにも気が合わないのだ。第一王子とはいえ、国王と同じく平凡な自分と比べるとみじめになるのだ。彼女の方がなんでも目立ってしまうのだ。それを嫉妬というかもしれないが。
そんな彼がいま夢中なのはカルメンだ。カルメンは貴族出身でどこか小悪魔的な魅力があった。そんな彼女にアルベルトは夢中だった。少なくとも相思相愛だと確信していた。カルメンもぞっこんだと。そして心ばかりか身体さえも重ねてしまった。そのうえ、子供を授かってしまった。側妃制度のない王国であったため、アルベルトは彼女とお腹の子供のために恐ろしい決断をした。
その日、貴族だけでなく国内の豪商など上級国民たちが集う園遊会が王宮内の大庭園で開催されていた。華やかな衣装を纏った男女が思い思いの時間を過ごしていた。その日の主催者は当然国王夫妻だ、だから王族は全員出席していた。しかし、その裏では陰謀が進行していた。全てはアルベルトの企みに便乗したものであった。
アルベルトは18歳で、成人と認められる年齢になったので、もうすぐ王太子に推挙されるはずだった。その日アルベルトの横には婚約者サンドラではなくカルメンがいた。それに気づいた参加者たちからは何かが違うという言葉が漏れていた。一方のサンドラといえば誰にもエスコートされず一人で歩いていた。彼女の顔にはヴェールがかかっていて表情はわからなかったが、なにか異変が起きたのだと誰もが気付いていた。
会場中央の大舞台では場を盛り上げるための演奏者がいて華麗な音楽を奏でていたが、アルベルトがカルメンを連れて現れると演奏を止めてしまった。おかげで園遊会に集った人々の視線が集中することとなった。アルベルトの目の前にはサンドラが大舞台の下でいた。その場にいた者たちの全員がこれから何事かはじまるのがと固唾を飲み込んでいた。
「サンドラ! お前には失望した! よってお前との婚約を破棄する。かわりに横にいる子爵令嬢カルメンを婚約者とする!」
その言葉にその場の空気は凍り付いてしまった。なんと反応すればいいのかわからないからだ。園遊会に相応しくない行動だからだ、ここで婚約破棄をするなんて。アルベルトの思わぬ言葉に対しサンドラは少し間を取ってからしゃべり始めた。
「殿下、婚約破棄ですか。その前に理由をお聞かせいただけないでしょうか? このまま、分かりましたと身を引いてもいいですが、園遊会に来られている方に説明責任があると思いますがいかがですか?」
サンドラの口調はまさに次期王妃に相応しい堂々としたものだと誰もが感じていた。でも、それは過去のものだった。婚約破棄されたらただの公爵令嬢だから。誰もが美しいサンドラを捨て平凡なカルメンと婚約すると宣言したのか理由を知りたかった。たとえるなら駿馬から鈍牛に乗り換えるようなものだから。
「説明責任か? お前は分かっているだろう! でも次期国王として国民に説明する必要はあるな! ここにいる国民よ! このサンドラは断罪すべき悪女であるぞ! だから婚約破棄するのだ!」
その言葉に続く言葉を誰もが聞きたいと注目していた。だが、王宮内ではサンドラの父親らが国家を滅亡させる悪だくみを実行していた。
0
お気に入りに追加
105
あなたにおすすめの小説
あなたを忘れる魔法があれば
七瀬美緒
恋愛
乙女ゲームの攻略対象の婚約者として転生した私、ディアナ・クリストハルト。
ただ、ゲームの舞台は他国の為、ゲームには婚約者がいるという事でしか登場しない名前のないモブ。
私は、ゲームの強制力により、好きになった方を奪われるしかないのでしょうか――?
これは、「あなたを忘れる魔法があれば」をテーマに書いてみたものです――が、何か違うような??
R15、残酷描写ありは保険。乙女ゲーム要素も空気に近いです。
※小説家になろう、カクヨムにも掲載してます
【完結】夫は王太子妃の愛人
紅位碧子 kurenaiaoko
恋愛
侯爵家長女であるローゼミリアは、侯爵家を継ぐはずだったのに、女ったらしの幼馴染みの公爵から求婚され、急遽結婚することになった。
しかし、持参金不要、式まで1ヶ月。
これは愛人多数?など訳ありの結婚に違いないと悟る。
案の定、初夜すら屋敷に戻らず、
3ヶ月以上も放置されーー。
そんな時に、驚きの手紙が届いた。
ーー公爵は、王太子妃と毎日ベッドを共にしている、と。
ローゼは、王宮に乗り込むのだがそこで驚きの光景を目撃してしまいーー。
*誤字脱字多数あるかと思います。
*初心者につき表現稚拙ですので温かく見守ってくださいませ
*ゆるふわ設定です
王が気づいたのはあれから十年後
基本二度寝
恋愛
王太子は妃の肩を抱き、反対の手には息子の手を握る。
妃はまだ小さい娘を抱えて、夫に寄り添っていた。
仲睦まじいその王族家族の姿は、国民にも評判がよかった。
側室を取ることもなく、子に恵まれた王家。
王太子は妃を優しく見つめ、妃も王太子を愛しく見つめ返す。
王太子は今日、父から王の座を譲り受けた。
新たな国王の誕生だった。
私はただ一度の暴言が許せない
ちくわぶ(まるどらむぎ)
恋愛
厳かな結婚式だった。
花婿が花嫁のベールを上げるまでは。
ベールを上げ、その日初めて花嫁の顔を見た花婿マティアスは暴言を吐いた。
「私の花嫁は花のようなスカーレットだ!お前ではない!」と。
そして花嫁の父に向かって怒鳴った。
「騙したな!スカーレットではなく別人をよこすとは!
この婚姻はなしだ!訴えてやるから覚悟しろ!」と。
そこから始まる物語。
作者独自の世界観です。
短編予定。
のちのち、ちょこちょこ続編を書くかもしれません。
話が進むにつれ、ヒロイン・スカーレットの印象が変わっていくと思いますが。
楽しんでいただけると嬉しいです。
※9/10 13話公開後、ミスに気づいて何度か文を訂正、追加しました。申し訳ありません。
※9/20 最終回予定でしたが、訂正終わりませんでした!すみません!明日最終です!
※9/21 本編完結いたしました。ヒロインの夢がどうなったか、のところまでです。
ヒロインが誰を選んだのか?は読者の皆様に想像していただく終わり方となっております。
今後、番外編として別視点から見た物語など数話ののち、
ヒロインが誰と、どうしているかまでを書いたエピローグを公開する予定です。
よろしくお願いします。
※9/27 番外編を公開させていただきました。
※10/3 お話の一部(暴言部分1話、4話、6話)を訂正させていただきました。
※10/23 お話の一部(14話、番外編11ー1話)を訂正させていただきました。
※10/25 完結しました。
ここまでお読みくださった皆様。導いてくださった皆様にお礼申し上げます。
たくさんの方から感想をいただきました。
ありがとうございます。
様々なご意見、真摯に受け止めさせていただきたいと思います。
ただ、皆様に楽しんでいただける場であって欲しいと思いますので、
今後はいただいた感想をを非承認とさせていただく場合がございます。
申し訳ありませんが、どうかご了承くださいませ。
もちろん、私は全て読ませていただきます。
側妃、で御座いますか?承知いたしました、ただし条件があります。
とうや
恋愛
「私はシャーロットを妻にしようと思う。君は側妃になってくれ」
成婚の儀を迎える半年前。王太子セオドアは、15年も婚約者だったエマにそう言った。微笑んだままのエマ・シーグローブ公爵令嬢と、驚きの余り硬直する近衛騎士ケイレブ・シェパード。幼馴染だった3人の関係は、シャーロットという少女によって崩れた。
「側妃、で御座いますか?承知いたしました、ただし条件があります」
********************************************
ATTENTION
********************************************
*世界軸は『側近候補を外されて覚醒したら〜』あたりの、なんちゃってヨーロッパ風。魔法はあるけれど魔王もいないし神様も遠い存在。そんなご都合主義で設定うすうすの世界です。
*いつものような残酷な表現はありませんが、倫理観に難ありで軽い胸糞です。タグを良くご覧ください。
*R-15は保険です。
婚約者とその幼なじみの距離感の近さに慣れてしまっていましたが、婚約解消することになって本当に良かったです
珠宮さくら
恋愛
アナスターシャは婚約者とその幼なじみの距離感に何か言う気も失せてしまっていた。そんな二人によってアナスターシャの婚約が解消されることになったのだが……。
※全4話。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる