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第一章・転生したらモフモフケモノでした

03・モフモフケモノ

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 わたしが転生したモフモフケモノのアグラッシュは、この世界では理性と知恵と体力を持った家畜であった。売買の対象であるし財産であった。所有者からすれば頼りになる反面、反逆する危険もある。そのため、所有権移譲の場合には、それなりの儀式が必要だった。

 その日のセリが終わり、セリを主催したデブ氏ことセルゲイ・オルノフはホクホク顔をしていた。手数料込み間違いなく88000ディナール分の金貨がたっぷり入った皮袋の中身を確かめていた。出荷元に引き渡してもなお、16000ディナールも手元に残る! セルゲイはその金で何が出来るだろうかという事を考えていた。すると目の前にいたアグラッシュとその新しい所有者が立っていた。

 「ねえ、お金を渡したんだから早くやってもらえない? そこに見せたでしょ、アグラッシュの所有許可と冒険隊組織許可の勅許状、それと・・・」

 女騎士姿の第三王女ソフィアはセルゲイに近寄っていた。彼女はその時17歳で、騎士としては半人前で冒険者を組織する素質がある様に見えなかった。宮中の舞踏会でダンスをしている方がお似合いだった。そうセルゲイは言いたかったが、必要な書類も提示されているし代金も支払われている。だから速やかに引き渡さないといけないのだが、彼女の目的がいまいちよくわからなかった。

 「わかりました、殿下」

 「殿下はいいわ、わたしはこれから一介の冒険者として任務を果たす旅に行くからソフィアでいいわよ。それよりも早く!」

 ソフィアがせかすのは落札したアグラッシュのマスター登録の儀式だ。セリの間は誰の所有でもないという扱いなのでありとあらゆるものが封印されていた。能力、そして知識や記憶だ。その措置の際に前世のわたしの記憶の断片が蘇ったわけだ。

 「わかりましたよ、それと詮索は無用だというんでしょ、なんで落札したのかも」

 「ええ、そうよ! それと私が落札したことをあちらこちらに言いふらさないでちょうだい。いろいろと面倒だからね。どうしても必要なのよ、そこのモフモフケモノさんが」

 ソフィアは譲渡書類に署名をすると、彼女にが抱きついて来た! そしてわたしのモフモフな毛皮に顔をうずめてきた!

 「ねえ、これであなたのマスターよ! モフモフちゃん! 嬉しいわ!」

 セルゲイは唖然としていたが、思い出したかのようにこういった。

 「ソフィアさん、嬉しいのは分かりますが儀式をしてください。それと・・・好きな名前を付けてください! 儀式ができませんから!」

 それを聞いてソフィアは少し考えてからこういった。

 「そうねえ、このモフモフちゃんの名前ね。妹みたいなものだからね、ナディアがいいわね! 今日からナディアね!」

 その時から私はナディアという名前になった。
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