上 下
5 / 43
(1)静香

影を追いかけろ!

しおりを挟む
 俺たち二人は暗闇を逃げるように動く影を追いかけた。その影は人ぐらいのサイズがあったが、追いかけるにつれてスピードが遅くなっていった。

 「門田、追いつきそうだよ、でも恐ろしい。俺はゴメンだぞミンチになるのは」

 「心配するな、ミンチになっているならとっくになっているはずだ。ほら言うだろ、雷の音が聞こえるうちは大丈夫だ。雷が落ちてしまったら聞こえない、だって死んでいるからだと」

 「なんじゃいそれ? それよりも門田。もし危険だと思ったら俺だけ逃げても構わないか? そのかわりお前の最期を伝えてやるから」

 「お前こそなんだそれ? まあ逃げる事が出来たら逃げても良いぞ」

 「そりゃどうも」

 友人とはいえ本当に薄情なヤツだと思ったが、得体の知れないものだから、そう思うのも仕方なかったといえる。俺だって静香絡みじゃなかったら、とっくの昔に逃げ出しているところだった。それにしても、こいつが静香を襲ったというのだろうか?

 この時、俺は恐ろしい想像をしていた。こいつに静香は食われたんじゃないかと? あの場に静香の服だけが残されていたのも、食うのに邪魔なものを剥ぎとっていったんじゃないかと。

 そう思うと、俺は俄然として影を追いかけることにした。こいつは静香の敵かもしれない!
しおりを挟む

処理中です...