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’(7)終局

やばいモノ

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 二人はテントの奥へと行った。そこに行くまでも自衛隊員らしき遺体が転がっていたが、触手なようなものが絡んでいた。そして身体に纏わりつくような瘴気に水蒸気にとにかくあらゆる不快なものが淀んだ空気感を感じていた。本能的に身体は逃げろと警戒を発しているのを感じながら。

 「なんなんですか、これ?」

 「ああ、これはな・・・」

 その時目の前には巨大なカマキリの・・・卵を収めた鞘のようなものがあった。異様な空気感はそこから発している様だった。急いで動画と画像を収録したが、数分が永遠のようにも思えた・・・もしかすると取り込まれるような気がした。

 急いでその場を離れると、テントへと向かう光があった、それを見た洗川は叫んだ。

 「急げ! やばいぞ! その先のくぼ地に入って身をかがめ!」

 その光は、巡航ミサイルだった! ここを破壊するための!

 二人がくぼ地に入ったと同時に巡航ミサイルは着弾し、テントから半径数百メートルに及ぶ衝撃波を伴った爆風が発生した。背中に猛烈な熱気を感じた門田は生きた心地がしなかった。しばらく、動けないでいると洗川はうめき声をあげていた。

 「門田、危ない目に遭わせすまない・・・」

 洗川は背中を焼かれていた。門田の身体に覆いかぶさるような形だったので、門田を守ることは出来たが、自身は瀕死の重傷だった。

 「先輩! 大丈夫ですか?」

 「大丈夫と言いたいが・・・無理だな。とりあえず動画と画像は然るべきところにアップしているが・・・消されるかもな。とにかく、このメモリーをもって逃げろ! 俺を置いて!」

 「置いとくなんて、無理っす! いったいなんです、あれ?」

 「あれはな、お前の・・・カマキリ人間にされた従兄弟が残したものを培養したものさ。何を培養していたかというと、生殖器だ! 受精していたと確認できたから・・・愚かにも・・・」

 続きを待っていたが洗川は事切れてしまった。門田は逃げようとしたが、炎の中から数多くのうごめくものが見えた。その多くは即座に斃れ動けなくなったが、いくつかが飛び出してきた。そして門田に目をくれず追い抜いて行った。それは・・・子供のように見えたがカマキリのようにも見えた。

 その後、門田は命からがら逃げて、最初に出発したところまで逃げた。そこまで多分行くときにかかった半分の時間でたどり着いたようだった。疲労困憊しきっていたはずだが、生命の防衛のために潜在能力を発揮したかもしれなかった。

 門田はまずいとも思ったが人がいそうな民家を探したが、ここは過疎地で限界集落なのでなかなか見つからなかった。そのとき頭上に爆撃機がやってきたかと思ったが、地上に空対地ミサイルを撃ち込んだ! その衝撃で門田は吹き飛ばされた!

 どれくらい時間が経ったかわからないが、門田が目を覚ました時、暗いところにいた。リュックの中身が散乱していて、その中に洗川が使っていたスマホがあった。電源が落ちていたが、再起動が出来た。

 いったい何が起きているのだろうか? 情報を収集しようと思った。全身激痛が走っていたので、もしかすると生きて帰れないかもしれないと覚悟していた。でも、どうなっているのかぐらいは知りたかった。

 スマホは奇跡的にウェブに接続出来た。その瞬間門田は驚愕した! 

 「カマキリの化け物が暴れまわっている?」

 画面にはカマキリに噛まれ・・・昆虫人間となった群衆がゾンビのようになって自衛隊と交戦しているというニュースが表示された!


 「俺は・・・やばいモノを見ていたんだな・・・」


 そののち門田は奇跡的に生還したが、空港を中心として半径50Kmは壊滅していた。全ては纐纈らの悪魔の研究のために・・・生み出された化け物によってパンデミックが起きていたわけだ。
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