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(1)静香

連れ去らわれた静香

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 雑木林の中を獣道のようにくねくねと蛇のように横たわっているような細い路はコンクリートで簡易舗装されていた。その道幅は原付バイクが離合するのも難しいぐらいの幅しかなく、おまけに急こう配だった。そんな細い路に車など走ってくることはなかった。だから車に乗った不審者なんて遭遇するはずはなかった。

 「何よ!あれはなんなのよ」

 その細い路を通っていた女子高生の静香は焦っていた。部活が遅くなって真っ暗になってしまったのに、近道だからと言ってこんな暗い山道を帰宅していたことを後悔していた。街灯はあるが、雑木林の木々の葉っぱに隠されているようなモノなので、不気味さを醸し出していた。古い蛍光灯の外套の光は、葉っぱの緑を帯びていた。

 さっきから変なものが付いている気配がしていたのだ。それも人間のモノとは思えないものだ。この路には野生動物が出現することはあるし、キツネやタヌキを見た話は珍しい事ではなかった。そんな気配とも違っていた。

 「はやく、ここを抜け出さないと!」

 とにかく静香は走っていた、その気配は危険な存在だと本能的にわかっていた。しかしその気配に追いつかれてしまった! 静香はカバンを投げつけて撃退しようとしたけど無駄だった。そいつに静香の身体はまきつけられてしまった。それは人外? まさか?

 「なによ、あんたは、人間じゃないよね?」

 断末魔の叫びをあげたが、一気にその気配に静香の身体は包まれてしまった。その得体の知れない物体に巻きつけられた静香は恐怖に支配されつつあった。そいつの脇には黒い不気味な人影もあったが、その顔ははっきりわからなかった。その得体のしれない物体は静香の胸元とスカートの下から侵入してきた。まるで全身が粘々の触手に犯されているような気がした。抵抗しようとしても、手足の自由は利かない。それどころか身体がその触手の中で浮かぶ上がっているような感覚になった。そして全身が気色悪いのか気持ちよいのか分からなくなる感覚に包まれた。

 「やめてよ、やめてよ。でもなんか気持ち良いわね・・・」

 そんな言葉を残したようであったが、その後はよく判らなかった。彼女はその中で熱いモノのなにかに包まれたような気がした。そして意識を失ってしまった。

 静香の断末魔の悲鳴を聞いて駆けつけた近所の住民がみたのは、彼女のカバンと主を失った得体のしれない液体で汚れた制服だけだった。制服は吐き出されたかのようにクチャクチャになっていた。セーラー服の上下も下着も掃き溜めみたいな粘々の中にあった。まるで皮ごと口にしてはき出されたブドウの中身を失ったもののように・・・

 彼女はどうなったのか? その謎は解けなかったが、彼女の失踪後付近では謎の影の目撃証言が頻発するようになった。そかしその正体をはっきりと見たものはいなかった。

 夜な夜な出没するその影をUMA(未確認生物)であるとする話題で街では持ちきりになった。噂によれば、そいつが静香を連れ去ったんだと!
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