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(6)決戦

死闘!(後編)

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 この絶望的な状況でも、カマキリ人間が絶対やりたいことがあった。纐纈らが乗ったビジネスジェットの離陸を阻止する事だ。しかしクモ人間は必死に守ろうとしていた。まるで悪魔の卵を護ろうとしている母クモのように。それに周囲は猛火だ。それにも構わずカマキリ人間の、門田と静香の意識は、クモ人間を無視してビジネスジェットに向った。しかし、猛火に外骨格は焼かれ始めた!

 「馬鹿め! じゃあな試験体! てこずったが充分楽しめたな!」

 纐纈とパクがそう言い放してハッチを閉めた時、カマキリ人間が投げつけた泥のようなものが機体をかすめた。その時雫のようなものが機体に付着していた。でも、そんなことに気付くことはなかった。ビジネスジェットは滑走を始めると性能ギリギリの上昇角度で空の上に消えていった。

 この状況でカマキリ人間に残された選択肢はひとつしかなかった。逃げる事が出来ないのであれば相打ちだった。逃げて生き延びる事は出来ないだろうし、出来てもこんなバケモノの融合した姿で生きていく地獄は避けたかった。

 「いいの? 門田君? 死ぬのよ、わたしたち!」

 「いいさ! 静香と一緒なら」

 カマキリ人間の意識の中で二人の意見は一致した、特攻だ! カマキリ人間はクモ人間の胴体に潜り込むと、関節を切り刻みだした。鎌を振りかざして! でも強烈な抵抗を受けた。クモ人間から大量のクモ糸が放出された。カマキリ人間の行動を阻止しようと! しかし、そのとき恐ろしい事が起きた。クモ糸が周囲の猛火からの放射熱によって炎上し始めた! 当然クモ糸を放出している口の内部に引火し、外骨格の内部が焼かれ始めた。クモの胴体は燃え上がった。そしてカマキリ人間も!

 二体の改造人間は火だるまになりながらも戦い続けていた。外骨格が燃え、有害なガスを放出し強烈な酸性の水蒸気は戦いの場の周囲を環境を破壊しつくしていた。逃げ遅れていた自衛隊員も次々と命を落としていった。そして最初に撃墜されたC2輸送機に積まれていた纐纈らの野望の種も炎上し始めていた。一帯が地獄になった!

 纐纈らが離陸してから一時間後、全てを焼き尽くしていた。空港だったところは滑走路が高温で変形し、管制塔や格納庫も鉄骨を残して焼け落ちていた。そして、改造人間らの戦闘を目撃していた者の多くは命を落としていた。滑走路の周囲には原型をとどめていない自衛隊の装備品だったジープの残骸が散らばり、犠牲者も骨になるまで焼かれていた。そんななかを動く者がいた。クモ人間だった!

 クモ人間は胴体だけになっていた。ほとんど炭化していたが、動いていた。その光景を見れる人間はいなかった。そのとき、朝日も昇り辺りを覆っていた霧は晴れたが、空港周囲の山林も壊死し、生物の息吹すら感じられない死の世界だった。動くのはクモ人間だけのはずだが・・・

 「俺たち、もう長くないよな! 最期にやつに喰われて生き延びるなんて!」

 「そうね! 最期よね・・・苦痛しかないわね」

 クモ人間を動かしていた者、それはクモ人間に飲み込まれたカマキリ人間の前脚だった! その前脚が前に進もうとしていたのだ! クモ人間の外骨格のなかで上半身の一部が機能していた! でも、大部分の組織を失った彼らに生存できる可能性はゼロだった。

 クモ人間、いやカマキリ人間の頭部と片方の前脚は上半身の一部がバラバラになってきた。すると、人間の身体の一部が出てきた!

 「なんだか・・・意識が霞んできたわ。もう最期よねわたしたち・・・」

 「ああ、そうだな。纐纈の奴らに鉄槌を下せなかったのは心残りだな」

 「ええ、でもあんな悪い事をしたやつらに・・・罰が下らなかったらこの世は終わりだわ・・・でも、もう・・・」

 「もう、いいさ。次に生まれ変わる時には・・・カマキリでもいいからこんな酷い目にあわなければ、いいんだが・・・」

 「そうねえ・・・」

 「お、や、すみ・・・静香・・・」

 「もんで・・・んくん・・・」

 カマキリ人間の生体機能は永久に止まった。その後の調査によれば回収されたカマキリ人間の内部で原型をとどめていたのは人間の大脳皮質みたいな塊だけだったという。それが二人のなれの果てだった。一方、纐纈達といえば、二度と日本に戻ることはなかったという。それは・・・
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