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(5)融合
霧の飛行場
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纐纈とパクは奇妙な愛情関係を持っていた。それを同性愛なのか兄弟愛なのかなどと定義するのは難しかった。その二人を乗せたヘリコプターが到着したのは、小さな飛行場だった。この飛行場は陸上自衛隊が管轄しており、小規模な部隊が駐留していた。また民間航空路線も就航しているので空港ターミナルもあったが、一日に東京へ定期便は一往復しか運航していないので、民間人は誰もいない状態だった。
その飛行場の滑走路に長距離飛行の可能なビジネスジェットが着陸してきたのは夜明け前の暗闇であった。7077作戦実行から六時間、生物兵器の研究チームは日本を離れ新たな拠点を目指そうとしていた。一部の研究員は前日の東京便で出発していたが、纐纈とパクは機密が詰まったハードディスクの処分をしていた。
「同盟国」のアメリカに渡せないようにするためだ。オリジナルデータのうちこれがないと出来ないデータ、人間のDNAを書き換えて兵器に改造するナノマシーンの製造方法は二人が握っていた。その方法は二人の手中にあった。また研究所から「実験体」のサンプルはもう一機の輸送機に積み込まれていた。
「さあ、馬鹿どもが気付く前に高飛びしようぜ!」
纐纈は研究所から運び出した荷物が積み込まれるのを確認して、離陸するのを見送ろうとしていた。輸送機は半島PKFに展開しているはずの国連軍に参加した自衛隊輸送機C-2だった。この輸送機の航続距離では目的地である南太平洋の島には直接いけないので、途中沖縄で給油させる必要があったからだ。
「それにしても実験体十三号の残骸が実験体十八号と融合するとはなあ。さすが愛し合った男女だけのことはあるな。今度、別々に進化した生物兵器の融合に使えるぜ」
パクは静香の肉片が門田に融合する動画を確認していた。奴からすれば実験体と呼ばれる生物兵器になった人間はただの研究サンプルにすぎなかった。
「そうだな。いまごろそいつらにウイルスが利いているころだろ? 今頃は分解してるとこだろうけど、大丈夫か? 環境に?」
パクの背中に纐纈がすり寄っていた。それはまるで幼児が戯れるかのようであった。
「環境? さあな。半年もすればわかるんじゃねえか? あのウイルスの試験に使った実験体九号は、数時間で無毒化されたから大丈夫じゃねえかよ? 」
そういうと纐纈にパクは抱擁していた。
「それはそうと、もう少しだな」
纐纈は、夜明け近くになり明るくなり始めた霧の中を滑走し始めた輸送機を見つめていた。C-2輸送機のエンジンはフルパワーで空へと向かって霧の中へと消えようとしていた。
「じゃあ俺たちも出発だな。にしても政治家というのは馬鹿ばっかりだな。独裁者は叶うはずもねえ飛び道具に核兵器を付ければ誰もかれも言う事を利いてくれると思いあがるし、たまたま選挙で選ばれた為政者は自分の都合ばかりを考え相手に押し付けた挙句に抹殺されたからな。おかげで、この変貌弾丸の技術を手に出来たけどな」
パクが持っていたのは静香を化け物にした忌まわしい弾丸だった。
「ああ、それって改良されているんだろ? 実用レベルに? 今使っても大丈夫だろ?」
纐纈はその弾丸を見つめていた。
「ああ、でも最終試験があるぜ! それをクリアすれば世界は俺ら二人のものになるぜ!」
「ああ!」
その弾丸は二人の野望の結晶であった。それは人間を生物兵器に変えてしまうものだった。二人は来るべき新人類が現行の人類を隷属させる世界を夢想していた。もちろんそこに君臨するのは奴らになるはずだった。しかし、その夢想は打ち破かれてしまった。霧の向こうで爆発音が響いたからだ。
「何事か?」
纐纈が叫ぶと、脇にいた隊員は連絡を取っていた、すると。
「はっきりしませんが、さきほど離陸したはずの輸送機がそばの山に墜落したようです!」
「なんだと? あの輸送機は最新鋭なんだぞ! 墜落するはずはないだろ!」
纐纈の怒鳴り声は霧の中へと吸い込まれて行った。そのとき、向こうから銃声が響き始めた。
その飛行場の滑走路に長距離飛行の可能なビジネスジェットが着陸してきたのは夜明け前の暗闇であった。7077作戦実行から六時間、生物兵器の研究チームは日本を離れ新たな拠点を目指そうとしていた。一部の研究員は前日の東京便で出発していたが、纐纈とパクは機密が詰まったハードディスクの処分をしていた。
「同盟国」のアメリカに渡せないようにするためだ。オリジナルデータのうちこれがないと出来ないデータ、人間のDNAを書き換えて兵器に改造するナノマシーンの製造方法は二人が握っていた。その方法は二人の手中にあった。また研究所から「実験体」のサンプルはもう一機の輸送機に積み込まれていた。
「さあ、馬鹿どもが気付く前に高飛びしようぜ!」
纐纈は研究所から運び出した荷物が積み込まれるのを確認して、離陸するのを見送ろうとしていた。輸送機は半島PKFに展開しているはずの国連軍に参加した自衛隊輸送機C-2だった。この輸送機の航続距離では目的地である南太平洋の島には直接いけないので、途中沖縄で給油させる必要があったからだ。
「それにしても実験体十三号の残骸が実験体十八号と融合するとはなあ。さすが愛し合った男女だけのことはあるな。今度、別々に進化した生物兵器の融合に使えるぜ」
パクは静香の肉片が門田に融合する動画を確認していた。奴からすれば実験体と呼ばれる生物兵器になった人間はただの研究サンプルにすぎなかった。
「そうだな。いまごろそいつらにウイルスが利いているころだろ? 今頃は分解してるとこだろうけど、大丈夫か? 環境に?」
パクの背中に纐纈がすり寄っていた。それはまるで幼児が戯れるかのようであった。
「環境? さあな。半年もすればわかるんじゃねえか? あのウイルスの試験に使った実験体九号は、数時間で無毒化されたから大丈夫じゃねえかよ? 」
そういうと纐纈にパクは抱擁していた。
「それはそうと、もう少しだな」
纐纈は、夜明け近くになり明るくなり始めた霧の中を滑走し始めた輸送機を見つめていた。C-2輸送機のエンジンはフルパワーで空へと向かって霧の中へと消えようとしていた。
「じゃあ俺たちも出発だな。にしても政治家というのは馬鹿ばっかりだな。独裁者は叶うはずもねえ飛び道具に核兵器を付ければ誰もかれも言う事を利いてくれると思いあがるし、たまたま選挙で選ばれた為政者は自分の都合ばかりを考え相手に押し付けた挙句に抹殺されたからな。おかげで、この変貌弾丸の技術を手に出来たけどな」
パクが持っていたのは静香を化け物にした忌まわしい弾丸だった。
「ああ、それって改良されているんだろ? 実用レベルに? 今使っても大丈夫だろ?」
纐纈はその弾丸を見つめていた。
「ああ、でも最終試験があるぜ! それをクリアすれば世界は俺ら二人のものになるぜ!」
「ああ!」
その弾丸は二人の野望の結晶であった。それは人間を生物兵器に変えてしまうものだった。二人は来るべき新人類が現行の人類を隷属させる世界を夢想していた。もちろんそこに君臨するのは奴らになるはずだった。しかし、その夢想は打ち破かれてしまった。霧の向こうで爆発音が響いたからだ。
「何事か?」
纐纈が叫ぶと、脇にいた隊員は連絡を取っていた、すると。
「はっきりしませんが、さきほど離陸したはずの輸送機がそばの山に墜落したようです!」
「なんだと? あの輸送機は最新鋭なんだぞ! 墜落するはずはないだろ!」
纐纈の怒鳴り声は霧の中へと吸い込まれて行った。そのとき、向こうから銃声が響き始めた。
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