婚約破棄された令嬢は怪物のような戦士に生まれ変わる

１ 運命

　ウェリス皇国のとある館に無残な仕打ちを受けた少女が運ばれてきた。彼女の名はクリス・ヴィクター、昨日皇宮省から婚約破棄と大逆未遂罪による処刑を言い渡された。そのため、拷問後に溺死させられる残酷な刑罰を受けた。でも、彼女はギリギリのところで救助されここに連れて来られた。

　彼女は致命傷といっていいほどの傷を負っており、また衰弱も激しかった。だが、彼女を救い出した者からすれば都合よかった。救命措置として肉体改造できるからである。彼女はこれから禁断の術を施されるのである。

　着ていた粗末な囚人服を脱がすと、全身に傷を無数に負った身体が露わになった。かつては美しい磁器のような肌をしていたと想像は出来ても、今はむごたらしいとしか言えない状態であった。また顔も潰される寸前まで破壊されていた。その顔を見てクリスだといえるのも無理な状態だった。措置台に乗せられた彼女の身体は、人間の形をした崩れかけた肉体に過ぎなかった。

　「むごたらしい・・・いくら法とはいえ、こんな処刑を命ずるなんて法匪だな皇宮尚書のやつ！」

　「しかたありません、ここまで救助を待たなければ死んだと思われないでしょ。それに、溺死刑だから川で待ち伏せできたので」

　そこにいたのは、クリスの父、ヴィクター伯爵に依頼された錬金術師たちであった。彼らはクリスを匿うために異形の姿に変えるつもりであった。

　「ヴィクター伯が毒をあおった？　どうせ守旧派にけしかけられたんだろ。おいたわしい！　こうなったらクリス様だけでも助けようじゃないか！」

　これから傷ついたクリスの身体を、聖獣と一体化する術が始まろうとしていた。聖獣の中に彼女を隠すとともに、再生するために。そのためにここに集められた。ここから、クリスの復讐劇が始まる！