機械娘として転移してしまった！

二・機械娘化！

20.ヴィクター・ヴァンガード

　平行世界？　私は耳を疑った。そんな不可能な事ができるなんて。かつてワープ航法は宇宙に存在する全てのエネルギーを投入しなければできないといわれていたのが実用化できたけど。平行世界には絶対にいけないとされていて、もし平行世界に転移する物体があったら双方の宇宙が破綻するはずだと。

　「あなた、ヴィクター・ヴァンいやヴィクター・ヴァンガードさんですよね？　事故で頭脳だけが運行システムと融合した」

　クリスはそういって立体モニターに近づいていた。そこには老年のアゴ髭を伸ばした男性が写しだされていた。もちろん実物など存在しないものであったが。しかし、なぜ民間ワープ船の運行管理システムになっているの？　

　「お嬢さんたちそうです。私はかつて起きたワープ失敗事故で、意識だけを電算システムに残されたヴィクター・ヴァンガードです。いまから385年と251日前にアンタレス恒星系近辺で発生したUSSロジャー・デービスの科学主任でした。あの時は新型ワープ機関の試運転でしたが、今回のように亜空間で大質量の浮遊惑星に遭遇して、暴走したのです。私は身体が蒸発する瞬間に機関の反転させることに成功したのですが、他の乗組員は機械と融合しました。
　私はかろうじてロジャー・デービスの運行システムに自我を写したのですが、国連宇宙総局は全ての情報を隠蔽したのです。隠蔽に際しては差しさわりのない程度で情報を公開したのですが、都合よく改竄してしまいました」

　「改竄？　確かに公式記録データではあなたの自我は国連宇宙総局科学技術研究所で活用されているとありますね。しかし、なぜこの宇宙船の運行システムになっているのですか？」

　「それはですね、この59711便はロジャー・デービスのワープ機関をリサイクルしたものを輸送中だったのですよ、だから本来の運行システムのAIと交代で私が移植されたのです。
　民間旅客ワープ船を使ったのもマスコミや他の星間連合体から隠蔽のためでした。しかし、あの浮遊惑星に遭遇したことで、本来は作動するはずのないワープ機関が作動してしまったのです。そして暴走しました！」

　五人の機械娘たちは何のことなんかと聞いておくしかできなかった。