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一・旅立ち

5.脱出準備

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 ワープ宇宙船の安全性は地球大気圏内を飛行する旅客機よりもはるかに高いとされていた。実際、他の知的生命体文明も利用する亜空間での事故率は問題にならないほど低いはずだった。しかし、その低いはずのトラブルが起きてしまったのだ。亜空間でワープ推進が完全に停止してしまい亜空間に閉じ込められてしまったのだ。一度起動したワープエンジンの動力はワープ空間を抜け出すまでは稼働し続けるはずなのに、59711便は停止してしまったのだ。

 ワープ推進が停止しても亜空間にいる間の人間の動作は緩慢なままなのでアリスの介助なしではベットから起き上がるのもやっとであった。起き上がるとアリスは私にこう言った。

 「申し訳ございませんが、今着ている服を全部脱いでください。これからコールドスリープ用のスーツに着替えていただきますから」

 「着替えるって? それですか?」

 私が戸惑ったのはとてもじゃないけど全身をカバーできそうもないような袋に入れられた布を折りたたんだものだったから。ハンカチをちょっと広くしたようなものにしかみえなかった。

 「そうです。それはコールドスリープ装置に入った時にお体の細胞が破壊されないようにするためのものです。本来のコールドスリープでは時間をかけて措置するのですが、緊急時の場合予期しない速度で進む場合があります。その場合、凍傷のような傷が生じる場合があるので、それで全身のお肌を守るのです」

 それで袋から出して広げるとそれは、全身タイツのようなものだった。ただ違うのはツーピースになっている程度だった。

 「これってぴったりするのですかお肌に?」

 「そうですわ。お体に完全にフィットいたしますわ」

 アリスはそういったけど私は自分のボディラインが露わになるのが恥ずかしかった。たとえそれが機械のアリスしか見られていないとしてもだ、でも、命には代えられないので私は着始めた。着た後で部屋の姿見をみるとそこには真っ青な人型が映っていた。それってまるでアリスの外骨格と同じ姿だった。ふと、いま重大な事態が進行しているのを思い出した。

 「気持ちいい! アリスとお揃いみたいで気に入ったよ! それにしても大質量と遭遇したとかいっているけど一体どうなっているのか分からないかな?」


 そういうとアリスはヴィクター・ヴァンとなにやらやり取りをしていた。どうも情報を分析するのに追われている様子だったが、それだけ混乱している様子であった。するとしばらくしてからこう言い始めた。

 「大質量というのは・・・亜空間に通常空間からはぐれてきた浮遊惑星です。それがあるとワープエンジンのサーキットが切れるみたいでした。だからサーキットブレーカーが治るまで今しばらくお待ちください」
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