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第一章・異世界にやって来た高校生

03.剣道用防具に憧れをもった少女

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 悠亮がアオイとエリザベートの剣道の練習相手をするのは、三人の中で最も長く剣道をやっていたからだ。だから一応、型通りに面や小手といった技をやったり練習相手が出来た。ただ、長いキャリアとはいっても、試合に出れるレベルではなかった。そう悠亮の剣道の腕は大したことなかった。だから練習するたびに二人との実力の差は開くばかりだった。

 エリザベートは高校一年にして身長が175センチあり、悠亮やアオイよりも高かった。まだ廻られた体格なので様々なスポーツに精通していた。なので剣道を高校から始めたので周囲から何故なんだ? といった声が上がっていた。

 「ねえベス。この防具を着るのがいま楽しいの?」

 アオイは防具をチェックしながら聞いていた。動かないロープウェイのゴンドラ内は何とも言えない汗臭い匂いが漂っていた。特にエリザベートの方が匂っていた。

 「それはねえ、やっぱ騎士みたいな姿になれるかしらん」
 
 「騎士、それってまさか?」

 「そうよ甲冑のような衣装を着たりしているでしょ! なんかのネットゲームなんかでも出ているじゃないのよ! わたし憧れるのよね、この金髪に似合いそうで」

 そういってエリザベートは後ろで縛った長い金髪を悠亮に見せつけていた。彼女の金髪は当然地毛なのでコスプレ衣装を着るためウィッグを用意する必要がないのがうらやましいといえた。

 「それなら剣道の防具でなくてもいいんじゃ・・・」

 「防具じゃないといけないのよ! そうじゃないのゲームのキャラクターのコスプレをしても所詮はチート能力が発揮できないじゃないのよ!
 その点、防具は実用的だし戦いに使えるし、それにこの拘束感が堪らないのよ!」

 そういってエリザベートは胴を自分のお腹に合わせて喜んでいた。どうやら彼女は戦闘能力がありそうで適度に身体を縛り付けるのが気に入っている様子だった。でも、それってなんかのフェチじゃないんじゃないかと、悠亮は突っ込みたかったが、やめにした。

 雨が上がり天候が回復したので運行が再開された。山上の駅から麓まではわずか五分で着くはずだった。しかしそれが三人にとっては長い長い旅になってしまうことは予想も出来なかった。

 ゴンドラが動き出して悠亮は広げていた防具を袋の中にしまっていた。アオイもエリザベートも割とガサツなところがあるので自分が整理した方がマシだと思ってのことだった。

 中間地点の駅を過ぎた後は麓の終点まですぐだった。しかし急に空には黒い雲、周囲には深い霧が発生した。

 「さっきの本だけど、こんな風になったら時空震の前兆なんて書いてあったよ。本当に不気味だね」

 「なにを言っているのよ、そんなオカルトみたいな・・・」

 悠亮にアオイが云いかけた時、三人の視界は真っ白になった。そして暗い闇の中へと意識が遠のいていった・・・
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