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第一章・異世界にやって来た高校生
02.帰り道は荷物持ち
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アオイと一緒にいたのは剣道部員のエリザベート・ハインリッヒだった。彼女は父がドイツ人で母が日本人とドイツ人のハーフという四分の一だけ日本人という女の子だった。でも日本に生まれた時から暮らしていたので、外見はドイツ人でも中身は日本人と変わらなかった。
「阪垣くん待った? 悪いんだけど手伝ってくれないかな? これ持ってよ!」
アオイとエリザベートは悠亮に剣道の防具を持たそうとした。なぜなら大雨が降りだしたからだ。そのかわり傘はさしてやるという事だ。そのあと悠亮は女の子二人に傘をさしてもらいながら剣道の防具を二つも背負って帰るという羨ましいようでそうでもない姿を同級生たちに見せながら高校をあとにした。この時の三人が帰る姿は多くの人たちにとって最期の姿と認識されたのは、その直後だった。
あまりにも雨が強いので高校から最寄りの駅までは「スカイラインつつじケ丘線」に乗ることにした。そのロープウェイは高校がある新興住宅地が丘の上にあるのに対し、JRの最寄り駅が谷底にあって標高差もあるので直線距離は短くても道路が相当迂回しているので、それなりに利用者がいるとして建設されたものだった。
ただロープウェイといってもゴンドラは小さく六人乗りだったので三人と防具を乗せたところで客室内はいっぱいになった。この日は麓の駅から登ってくる乗客は多かったが、高校の帰宅時間は大幅に過ぎていたので、悠亮たち三人以外に乗ろうとする生徒は少なかった。その日は夏至だったので陽が暮れるのは遅いはずだったが、まだ日没前なのに激しい雨をもたらした雨雲のせいで薄暗かった。ただ、はげしい雨のせいでゴンドラはなかなか出発しなかった。
「阪垣くん、なにを読んでいるんのよ? なんか怪しげだね!」
悠亮が取り出したのは古本屋の百円コーナーにあったハードカバーの本で、藤村徹治著「平行世界との回廊」という疑似科学とされるものだった。本当のことを言えば1000円分買えばくじがひけるセールで金額を合わせるために買ったのだった。
「いやあ、これはね、ほらよくあるじゃないのライトノベルなんかで、突然別の世界に転生したり転移したりするって設定が。その設定を科学的に説明するっていう本なんだよ」
「へー、そうなの? それでなんかわかったの?」
「まあ、わからない! なんだって僕は文系で物理なんか弱いから」
エリザベスと話をしていたらアオイが話に割って入って来た。
「そんなの出まかせに決まっているじゃないのよ! そりゃ私だってそんなオカルトみたいなお話好きだけどありえないじゃないのよ。突然違う世界に行ったり生まれ変わっても前世の記憶があるだなんて!
話としては面白いけど科学的に説明しようというなんてナンセンスよ! それよりも防具濡れていないか確認してよ一緒に!」
アオイに促され悠亮たちは運んできた防具を確認しはじめた。梅雨の多湿と高温のため袋を開くと汗臭い匂いが漂ってきた。その匂いはもちろんそこにいる女子二人の体臭がしみついたものだった。女子なら本当ならそんなものを男に触らせるなんていやなはずだが、二人とも悠亮を信頼しているというか従士のような存在と思っているらしく平気なようだった。
「これって、かえって着るの? 今日はやめた方が良いんじゃないの?」
「いいえ、着るのよ! 着た後で干せばいいんだから。明日は休みなんだし構わないじゃないのよ!」
アオイはそういったが、このまま三人が電車に乗って住む町に帰ったら、アオイの家のトレーニングルームで三人で剣道の練習をするはずだった。もちろん悠亮は練習の手伝いだった。そう、そのあと起きる事がなければ、やるはずだった。
「阪垣くん待った? 悪いんだけど手伝ってくれないかな? これ持ってよ!」
アオイとエリザベートは悠亮に剣道の防具を持たそうとした。なぜなら大雨が降りだしたからだ。そのかわり傘はさしてやるという事だ。そのあと悠亮は女の子二人に傘をさしてもらいながら剣道の防具を二つも背負って帰るという羨ましいようでそうでもない姿を同級生たちに見せながら高校をあとにした。この時の三人が帰る姿は多くの人たちにとって最期の姿と認識されたのは、その直後だった。
あまりにも雨が強いので高校から最寄りの駅までは「スカイラインつつじケ丘線」に乗ることにした。そのロープウェイは高校がある新興住宅地が丘の上にあるのに対し、JRの最寄り駅が谷底にあって標高差もあるので直線距離は短くても道路が相当迂回しているので、それなりに利用者がいるとして建設されたものだった。
ただロープウェイといってもゴンドラは小さく六人乗りだったので三人と防具を乗せたところで客室内はいっぱいになった。この日は麓の駅から登ってくる乗客は多かったが、高校の帰宅時間は大幅に過ぎていたので、悠亮たち三人以外に乗ろうとする生徒は少なかった。その日は夏至だったので陽が暮れるのは遅いはずだったが、まだ日没前なのに激しい雨をもたらした雨雲のせいで薄暗かった。ただ、はげしい雨のせいでゴンドラはなかなか出発しなかった。
「阪垣くん、なにを読んでいるんのよ? なんか怪しげだね!」
悠亮が取り出したのは古本屋の百円コーナーにあったハードカバーの本で、藤村徹治著「平行世界との回廊」という疑似科学とされるものだった。本当のことを言えば1000円分買えばくじがひけるセールで金額を合わせるために買ったのだった。
「いやあ、これはね、ほらよくあるじゃないのライトノベルなんかで、突然別の世界に転生したり転移したりするって設定が。その設定を科学的に説明するっていう本なんだよ」
「へー、そうなの? それでなんかわかったの?」
「まあ、わからない! なんだって僕は文系で物理なんか弱いから」
エリザベスと話をしていたらアオイが話に割って入って来た。
「そんなの出まかせに決まっているじゃないのよ! そりゃ私だってそんなオカルトみたいなお話好きだけどありえないじゃないのよ。突然違う世界に行ったり生まれ変わっても前世の記憶があるだなんて!
話としては面白いけど科学的に説明しようというなんてナンセンスよ! それよりも防具濡れていないか確認してよ一緒に!」
アオイに促され悠亮たちは運んできた防具を確認しはじめた。梅雨の多湿と高温のため袋を開くと汗臭い匂いが漂ってきた。その匂いはもちろんそこにいる女子二人の体臭がしみついたものだった。女子なら本当ならそんなものを男に触らせるなんていやなはずだが、二人とも悠亮を信頼しているというか従士のような存在と思っているらしく平気なようだった。
「これって、かえって着るの? 今日はやめた方が良いんじゃないの?」
「いいえ、着るのよ! 着た後で干せばいいんだから。明日は休みなんだし構わないじゃないのよ!」
アオイはそういったが、このまま三人が電車に乗って住む町に帰ったら、アオイの家のトレーニングルームで三人で剣道の練習をするはずだった。もちろん悠亮は練習の手伝いだった。そう、そのあと起きる事がなければ、やるはずだった。
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