やっと出来た彼氏がゼンタイフェチだったので私もゼンタイフェチになることにした。

ジャン・幸田

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7.彰と嘉奈と

ハロウィンの晩は一緒に

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 そんなゼンタイフェチな私と彰の間にはその後も色々と紆余曲折があったの。途中、破局寸前な事もあったけど、それだけで長い長い話になるし、単なるオノノケ話なのかもしれないのでもし別の機会に語ることがあればしたいと思う。結論から言えば、彰と私は本当に結ばれたの!

 ただ、彼は全国各地に転勤するようになったので、私もついていく事になったの。だからゼンタイのフェチを辞めたわけではなかったの! 行く先々でゼンタイフェチの輪を地方に広めてしまったの! それって良い事なんかどうかはわからないけど。

 もっとも、地方によっては頭の固い人がいるし、本当の変態扱いされたこともあったわ。でも、彰も私もゼンタイフェチの布教活動みたいなことを辞めなかった。だから『ゼンタイなんて下着の仲間みたいなものだから外を歩くだなんてまかりならない!』なんてネットで騒がれたこともあったの。

 そんなこんなで月日が流れ、ある地方都市に住んでいたある年のハロウィンの晩は私たち一家にとって忘れられない事をした。

 「ママ、これってやっぱり恥ずかしいわよ! 同級生に見られたくないわ!」

 「大丈夫よ、被ってしまったら誰か分からないわよ! パパもママもそして栞奈も晴奈も一緒なんだから」

 その日は彰が副市長として出向していたとある町のハロウィン仮装パレードに参加しようとしていた。フルオーダーゼンタイの地元メーカーの製品を宣伝するためということで、一家でゼンタイを着る事になったけど、もちろんそれは彰がそのメーカーに提案したからだ。だから言い出しっぺがやることになったという事だったけど、私たち夫婦は小学生の娘たちにゼンタイを着せる口実にしたかったからだ。

 「でも、このゼンタイって・・・」

 「それは外ではいってはいけないのよ! いう事を聞きなさい!」

 上の娘の栞奈は薄々ゼンタイが両親にとって特別な意味があるという事に気づき始めているようだったが、それを言う年齢でもないので秘密にしていた。でも思春期の女の子がそれを知ったら親は不潔だと思うかもしれないと心配だった。だからこそ、娘たちにゼンタイを着せたのだ。

 「お前たちのゼンタイ姿結構いいぞ! まるで鮮やかな仕事人の戦闘員みたいだ」

 彰は着替えてきたのは、町の様々な名所をデザインしたゼンタイだった。これはメーカーの技術力を宣伝するためのもので、私や娘たちのゼンタイも優雅な絵柄が付いていた。だから結構派手だった。

 「パパ、格好いいけどまるで派手なコイノボリみたいよ、ママもね」

 下の晴奈は意味も分からないまま変な衣装を着せられて戸惑っているようだった。なので私は・・・思わず触ってしまった!

 「ママ、なんか気持ちいいねスベスベして! ママに触ってもらうの気持ちいいわよ、じゃあパパにも」
 そういって晴奈はスキンシップをしはじめたが、それを見ていた栞奈は複雑な表情をしていた。どうもゼンタイフェチっていう意味が分かっていたようだった。

 「さあ、パレードが始まるわよ! 顔が出たままだったら同級生にばれるっていっていたでしょ!」

 そういって栞奈の頭にマスクを被せ、ファスナーをあげた。そして家族四人はゼンタイ家族となって集合場所へと向かった。その場所には本当に様々な衣装をまとった人々であふれかえっていたので、むしろゼンタイは大人し目なものに見えた。すると向こうから甲冑を着た老人が歩いてきた。その人はこの町の市長だった!

 「明村君、これが君が言っていたものかね? なんか・・・良いぞ! 今度はこれでなんかのイベントをしたいと思うぞ!」

 そんなお褒めの言葉を貰ったけど、ゼンタイで町おこしというのは想像するだけで楽しいというか頭が痛いというか、何とも言えない想像にかられた。でも、一つだけ確かな事があった。いまいる家族はゼンタイがあったから生まれたんだという事だ! それをみんなで着れるのは幸せなんだと!

 ー了ー
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