やっと出来た彼氏がゼンタイフェチだったので私もゼンタイフェチになることにした。

ジャン・幸田

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7.彰と嘉奈と

こんなに気持ちいいモノとは

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 私は疲労感でぐったりしていた。こんな形のロストヴァージンなんてやった女はそんなに多くないはずだ。二人そろってゼンタイを着てやるだなんて、いたら聞いてみたいという気がした。その時、私はまどろみのなかで気持ちよくなっていた。普通こういった契りというかエッチというか、まあ性交だけどこんな着衣のうえに互いに見えないセックスなんて・・・やっぱ異常なのかいしら?

 アソコがぐっしょりしているいのは分かったけど全身から噴き出した汗によって身体にゼンタイが張り付いている感覚があった。それはまさに新しい自分の皮膚のようだった。しかもそのさきは彰の体温を感じるのだ。これってやっぱり幸せということなんかな?

 それからしばらく二人でゼンタイのままで抱き合っていた。もしこの部屋に誰かが入ってきた時、さぞビックリするのは間違いなさそうな姿だった。そしてこういうだろう、変態でフェチだと。青と桃の人の影が重なり合っているのはシュールなはずだから。もっともゼンタイフェチの人から見ればどういうだろうかな。羨ましいそれとも?

 私は寝ぼけた状態で自分の手を動かした。そこには彰のゼンタイに覆われた分厚い胸板があった。擦るとしっとりとした感覚と衣擦れの音が聞こえてきた。まるで人間ではないなにか別のように感じた。

 実はそのあと、彰とフツーのカップルがやるエッチもしたけど、やっぱりゼンタイを着てやる方が刺激があった。どうも視覚という感覚が制限されることで他の感覚が研ぎ澄まされるかららしかった。やっぱり私は・・・ゼンタイフェチになったようだ。

 その日は昼過ぎまでそんな風に過ごした後で、ホテルを出たけど男女の関係になった外の世界は別の次元に来てしまったような気がした。月並みだけど世界が変わったというか・・・

 「今日はこれからどこ行くの?」

 私は彰に聞いてみた。するとこんな事を言い出した。

 「そうだねえ、とりあえず近くの美術館に行ってみない? いま特別展があるから」

 「いいわね、でもしゃべったりできないんでしょそこは」

 「そうだよ。でもしゃべらずとも伝わる。二人一緒にいれば。だから・・・」

 そういって彰は私の手を強く握った。その手はさっきまでのゼンタイを着た者同士のそれとは違った感覚があった。わりと彰の手はゴツゴツしているのがわかった。そのあとは互いに微笑みあった。たしかにしゃべらずとも通じ合えることはあるものだと。肌同士の触れあいでもゼンタイの生地の触れあいも。必要なのは二人の心が通い合う事なんだと。
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