やっと出来た彼氏がゼンタイフェチだったので私もゼンタイフェチになることにした。

ジャン・幸田

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5.ゼンタイでスリスリ

近づきたい!

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 ゼンタイを着ている人たちを見ていると・・・みんな人間には見えなくなっていた。人間のシルエットはしていてもみんな異形の姿をしていたからだ。それに記念撮影という事なのでみんなマスクを被り始めた。わたしは急ぎ彰ことアチャさんのところにいった。

 その日は全部で二〇人ぐらい参加していたけど、中にはカップルみたいな二人が二組いた。そんな二人を見て「ゼンタイカップル」なんて囃し立てられていた。なぜならペアルックのゼンタイを着ていたからだ。

 一組はメタリックゼンタイと呼ばれる金属のような光沢を放つ真っ赤なお揃いのゼンタイを着ていて、もう一組は真っ青なワニ柄のゼンタイを着ていたからだ。わたしは、そのカップルの顔をよく見ていなかったけど、手を組んだりしてバカップルじゃないの? なんて突っ込みをいれたくなるようにイチャイチャした雰囲気なのが分かった。

 でも、その姿は羨ましくもあった。あんな風に彰と出来たらいいのにと。確かに彰とは付き合っていてデートも行った事があったけど、なかなか身体を寄せ合ってという事が出来ず、出来たとしても手をつなぐのがやっとだった。あんなふうに小鳥が戯れるかのようにじゃれ合うというのは、もうそれほど若くない私にはまぶしくって出来ない気がしたのだ。

 そのせいか彰ことアチャさんのそばに私の身体は近づいていた。写真撮影なので密度が高くなっていたので、参加者の身体はくっつくようになっていたので、自然と他の人とゼンタイで触れ合うようになっていた。だから私の身体にアチャさんの唐草模様のゼンタイが接触していた。

 その身体の感触は鍛えられ引き締まった身体だと分かる気がした。たしか高校時代は陸上をしていたと言っていたので、身体は丈夫そうだった。その身体に私は無意識に手をまわしていた。なんか大胆になっているようだった。

 「もっと近づいていいよミャイちゃん。そうそうマスクを被らないとね」

 そういってアチャさんは私の顔にヒョウ柄のマスクを被せ後ろのチャックを引き上げてくれた。こんな風に男の人にしてもらうのは初めてだったのでドキドキしていた。全員がマスクを被ったところでドンさんが、シャッターを押そうとしていた。その時面白いことを言っていた。

 「みんな! 良い顔をしてくれい! あっ、ゼンタイのマスク越でいいからね」

 するとアルルさんから突っ込みが入った。

 「分かるわけないじゃないのよ、それは! でもゼンタイのマスクの中で幸せを感じている顔をしっかり撮ってちょうだい!」

 「おお、そうするよ。さあ皆仲良くにっこりと、ハイ、チーズ!」

 私はその時アチャさんの肩に抱きついていた。その肩はゼンタイ越であったけど頼もしく感じる事が出来た。
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