AIアイドル活動日誌

ジャン・幸田

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閑話「AIアイドルのなりかた」

素体化

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 ハイペリオンスーツは生体機能を維持するインナースーツと目的に応じた外骨格と呼ばれるアウタースーツに別れていた。美菜はこのときインナースーツに覆われていた状態だった。この状態を佳織は素体化と呼んでいた。この状態では内蔵された人間は一切動くことも出来ないし、視覚は遮断され何も見えない状態にあったし、液体呼吸に移行しているので喋ることもできなかった。それに素体化された人間は悍ましい状況であった。

 真っ黒いゴム状のものに覆われ、人の形をした何かにしか見えない状態だった。おまけに口からはチューブが伸びでおり、液体呼吸システムにつながっていた。このシステムは胸部を覆う外骨格に収納されるものであるが、まだぶら下げられた状態だった。

 「それじゃあ、いくわよ。アイドルロボにあなたを改造するわよ」

 そう佳織がいうと、助手ロボたちが美菜のボディに外骨格を装着し始めた。外骨格はデザイン重視のためモデル体型の美菜のボディラインにピッタリなものなので、必要最低限の機能しか搭載されていなかった。それでもそれなりに訓練した成年男子並みの力を出せる程度の人工筋肉が内蔵されているし、数か月着用したままで過ごしても大丈夫なようにインナースーツに覆われた人体を維持する機能がついていた。特に胸部や臀部はオリジナルよりも機器のせいで膨らんでいた。

 それから三十分ほどで美菜はアイドルロボのミナに生まれ変わった。この時点でミナは人間ではなく事務所の備品になったわけだ。

 「それじゃあ、起動するわよ」

 その言葉に美菜のウトウトしていた意識はミナとして自覚しなければならなくなった。
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