AIアイドル活動日誌

スカウト編！

スカウト

　「彼女のようにって意味がわかりませんが？」

　「まあ、話を聞いてくれたら分かりますわ。きっと、あなたも納得できますわ」

　佳織はめぐみが理解していないのもおかまいなく話を続けていた。まるで熟慮しないうちに話を進めてしまい契約まで話を持っていこうとするセールスマンみたいに。

　「先日、あなたが受けたオーディションでボディを３Dスキャンしたことがあったわね」

　「はい」

　なんでそんなことを知っているのか不思議に思ったが、個人情報保護が云々なんて事を考えてしなかったので、そんなにおかしいと思わなかった。

　「そのときに、実はハイペリオンスーツの適正も測定していたのよ。あなたは最高値のシンクロ率だとわかったのよ」

　ハイペリオンスーツ？　シンクロ率？　なにを言っているんかめぐみには本当にわからなかった。

　「そうなんですか、それがどうしたというのですか」

　「つまりねえ、目の前のろぼぎゃるずのメンバーになれる資格があるっていう事なのよ。あなたならなれるわよアイドルに」

　アイドル！　その言葉は憧れだった。でも待てよという事に気付いた。目の前にいるのはロボットよね？

　「なれるといわれてもロボットになれません！」

　めぐみの頭の中には父親が読んでいた昭和時代か平成時代の古い漫画の内容が浮かんでいた。女の子が悪の組織に拉致されて改造されて怪人や戦闘員になるというものだ。目の前のようになるってことは、サイボーグ化されるってことなの？

　「そうねえ、ロボットになれないわね。でも、ロボットになるっていうのは半分正解だわね」

　佳織の言っている意味は分からなかった。

　「なんですか、それ」

　「簡単に言えばロボットの衣装を身に着けてロボットの振りをするわけよ。でも、いいわよ。すぐにアイドルにデビューできるわよ」

　デビュー！　その言葉にめぐみは心を動かされた。でも衣装を着てロボットになるという意味が分からなかったが。

　「デビューですか？　なにか条件がありますか？」

　めぐみは詳しく説明してくれないので、デビューしたいような素振りをした。すると佳織はこんなことを言った。

　「うれしいわ！　まえむきなんだねあなたは。でも、そのまえに守秘義務の書類にサインして！」

　佳織のいうことは何かとずれていると感じてしまった。