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啓子が啓子を着る!

ソフィアの誓いみたい(2)

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 その時、わたしと人形の啓子は「ソフィアの誓い」のカリンとソフィアみたいであった。わたしは殆どハダカだし、向こうは豪奢な伯爵夫人のドレス姿だ。違いのはわたしは彼女の事を殆ど何も知らないという事だ。人形の中にいるのが女じゃないかもしれないとすら思っていたからだ。

 実は源五郎さんから哲彦に男色家疑惑があると聞かされていたからだ。彼は幼い頃に両親と死に別れ、そのまま陸軍幼年学校に入学し、そのまま士官学校を経て陸軍に入り、ずっと男ばかりの世界にいたわけだけど、そんな一緒にいる兵士の誰かと恋愛感情を抱いていたとしてもおかしくないという事だった。

 だから人形の啓子になっている人物は小柄の軍人で、傍に置くためにこんなにややこしい事をしているのではないかということだった。全ては源五郎さんの推測だけど。

 それはともかく、あの時のソフィアのようにわたしの目の前に近づいて、わたしの身体を嘗め回すように見ているじゃないの! わたしは結婚していても男にそんなことをされたといえば、お医者さんぐらいだった。もし人形の啓子が男だったらいやだなあと思っていた。そのとき、彼いや彼女はわたしの胸に手をかけた。

 「思ったどおりだわ。あなたってわたくしが十五の娘だった時に似ているわね。ちょっと、この胸をどうにかすればどうにかなるわね」

 十五の時に似ている? それってどういう意味なのよ! 人形にそんなことを言われたくないわと思った。
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