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プロローグ

2018年冬(4)

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 誠也は大学時代の友人だ。たしか卒業後は起業してある程度成功したんだと風の噂で聞いていたんだが、目の前の風貌ではそんな風にみえなかった。一体全体なにが彼の身に起きたのか想像が出来なかった。

 俺はなんとなく彼を自宅に招き入れていた。彼にあれこれ聞こうと思ったが言葉は思い浮かばなかった。なぜ、ここに来たんだ、どおしてそんな放浪の旅に出ているんだとか、いっぱい聞きたいことがあるというのにである。

 応接間が倉庫と化している我が家なので、あまりきれいでない我が家のリビングに彼を招き入れた。その時、テーブルの上にあの日記が広げていた。そのとき誠也が話を切り出した。

 「安橋さやかか・・・懐かしいなあその名前は・・・ところで、彼女のその後知っているのか、お前は?」

 そう日記の中のヒロインといっていい女の子の名前だ。麦わら帽子の少女の!

 「いいや、知らない!」

 俺は誰かと結婚していると言った事を言うと思っていた。しかし彼の次の言葉は・・・

 「行方不明なんだよ、あの日からずっと!」

 「あの日から? まさか! どおして?」


 その言葉の調子に誠也は思い出したかのようにこういった。

 「そおかあ、知らなかったんだな。あの時本当は何が起きたのかを!」

 それから誠也はあの日々の事を語り始めた。目の前の日記で欠落していた事実を。あのノストラに振り回された青春を!
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