ノストラがいた夏の日には・・・

ジャン・幸田

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1999年春

勧誘

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 あれはまだモラトリアムな時代だった。世紀末と言われていた1999年、当時の日本は不況の真っただ中だった。たとえ大学を卒業しても正社員になれずフリーターや派遣社員になるのが関の山っていうのが大勢いた。これが一昔前のバブル時代なら少々優秀でなくても就職できたというのにである。

 それはともかく、その時はとりあえず大学にでも行ったら何とかなるとおもっていた。そんな楽天的な時代だった。大学に入学して構内をぶらぶらしていた時の事だ。勧誘されたのだ。それは割かし綺麗な女だった。事前にカルト的な宗教や狂信的な政治団体が勧誘してくるかもしれないから注意しろといわれたが、その女の笑顔の誘惑に負けてしまった。

 「新入生さん? これって興味ないかしら?」

 地方から上京してきて間もない私は、女に免疫なんてなかったからあんまり考えずに振り返ってしまった。

 「ノストラ・・・ダムス? それって聞いたことがありますが」

 「そう、ノストラダムスよ。今年何かが起きるとすれば七月よ! そして八月になれば変わるのよ、この世界が!」

 「世界が、変る?」

 「そう、世界が! その時一緒に別の世界に行こうという同志を募っているのよ、私たち! よかったら話だけでも聞いてもらえないかしら? 嫌だったら帰っても良いわよ!」

 彼女の笑顔に参ってしまった私は彼女が渡した紙を受け取っていた。それがとんでもない事の始まりだと思いもせずに。
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