アルテミスの着ぐるみ美少女たち

（外伝一）アルテミスの美少女着ぐるみ隊

アルテミスの美少女になるために

　衣装箱に入っていたのは「アルテミスの美少女」の登場人物の衣装だった。作中の時代設定は1980年代、昭和時代晩期なので30年以上前だった。だから今から見ると少々古めかしい感じがするものであった。でも、それがかえって昭和レトロだと注目されていたが。

　その時、用意されていたのは作中の「三和聖隷女子高等学校」の夏の制服だった。それはアニメやイラストに描かれているものであるけど、少々変わった特徴があった。ワンピースのセーラー服だった。

　「いつも思うのですが昭和時代にも、こんな制服ってあったんですか、本当に？」

　愛梨は手に取ってみていた。その制服は上着もスカートも一体化したものであった。ちなみに「三和聖隷女子高等学校」の冬の制服はジャンバースカートにワンピースに上着が付くものでイメージが違うものであった。

　「それはねえ、なんでも成海先生の故郷の女子高の制服をイメージしたそうよ。でも、いまでは男女共学になってごく普通のブレザーになったそうよ」

　そういえば、成海先生の出身って岡山だったから、本当に昭和時代にワンピースのセーラー服が制服になっている学校があったのかもしれないと思った。まあ、それを確かめる手立てはないし志桜里は興味はなかった。取りあえず着るしかなかった。

　「わたしって、セーラー服を着るのは初めてなのよ。だからどうやって着るの？」

　志桜里は戸惑っていた。いくらドラマやアニメなんかで見ているありふれた服装であっても、実際に着たことは無い服装はこの世の中でいくらでもあるから仕方ないと感じていた。

　「はじめてなの？　それじゃあセーラー服初体験だね！」

　そういって愛梨が着せようとしたとき育枝が止めに入った。

　「ちょっとまって！　いまゼンタイを着ているっていってもあななたちは裸と一緒なのよ！　着ぐるみ美少女の設定上はねえ！　だからそこの下着をつけてちょうだい！」

　それで衣装箱の中の下着を取り出すと、それも古めかしいデザインをしたものだった。

　「こんなの着ていたの？　昭和時代の高校生って？　育枝さんも着ていたの？」

　「失礼な娘よね、あなたは！　私が小学校に入った時は平成でした！　昭和時代の事は知りません！　成海先生がアルテミスの美少女たちで描いている世界なんでしょ、その時代は！」

　愛梨は育枝を半ば切らせていたが、その場にいる女四人は昭和時代のことなんて知るはずもなかった。知らないから明治だろうが大正だろうが、作品世界でそうなんだという事にするしかなかった。だから志桜里も愛梨も用意された衣装を身につけた。

　「なんか、登場人物になったみたいだね。志桜里はそのまま基美ですっていえば通用しそうだね」

　愛梨にそう言われ志桜里は満更でもなかった。憧れの作品の登場人物みたい素敵と言われて気分が悪いはずはないというものだから。でも、それで終わりではなかった。次は着ぐるみマスクを被らないといけないから。