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(5)志桜里新型美少女着ぐるみを試着

はじらい

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 基美の内臓になっている志桜里はまるで身体が基美に奪われたような感覚になっていた。そう感じたのは勝手に身体が快楽を求め紘子を貪るからだ。志桜里はそういった百合百合に興味はあっても自分でしたいとは思っていなかったというのにである。身体が肌タイに覆われ顔が基美のマスクの中に隠れた瞬間、まるで生まれ変わったのような気がしていた。だから今は基美になり切っていた。

 基美と紘子の股間は密着していて淫らなではあるが愛情の交歓に耽っていた。それは「アルテミスの美少女たち」の中で基美と真里亜がしている行為だった。そのエピソードはアニメ版では放送コードに引っかかるので抽象的な表現になっていたが、漫画版では原作小説の字句をなぞるようにハードに描かれていた。

 漫画版では傷ついた真里亜を癒そうとして始めた基美の行為が、快楽に溺れ暴走した結果真里亜の貞操を奪ったうえかえって傷つけてしまうというエピソードを志桜里は思い出していた。もっとも、目の前にいるのは愛梨を内臓とした紘子であったが。

 そのエピソードは悲しむ真里亜を手籠めにしてしまった基美が快楽に耽った後で罪悪感に襲われるのであるが、この時志桜里は同じ気持ちであった。女の子同士でセックスみたいなことをしてしまったから。

 ただ、志桜里も愛梨も着ぐるみマスクを被ったんだから、そのエピソードをちょっとやってみたかったという軽いノリで初めてしまって最後までやっていた。しかも想像以上に気持ちよかった。

 「あのときの真里亜は泣き出していたけど、今日の紘子は嬉しいわよ」

 紘子の笑顔のマスクからは愛梨の声が聞こえてきた。作中世界では真里亜との関係で絶対基美と和解しそうもないキャラクター同士の百合百合を終えての感想だった。そこ声はなんかすっきりした声だった。愛梨はロストヴァージンしていたので、そういった行為を快感として知っていた。一方の志桜里はまだだったけど。

 「そのあと基美は自分がしでかした行為に打ちひしがれてしばらく真里亜との関係がぎくしゃくしてしまったのよね。でも、あの別荘の一夜でまた」

 志桜里はそのあとの話を思い出したが、どうも成海先生はそれを再現するつもりのような気がした。わざわざ弘樹を真里亜にする理由がそれぐらいにしか考えられなかったから。

 「そうね、そこで基美は真里亜とエッチして・・・あっ、まあ中学生には刺激あるかもね。成海先生の文章は情感が溢れて綺麗だったけどね。アニメでは絶対できないよね。なんだってパンチラなんてしちゃダメなんていうことらしいからね」

 愛梨が言ったパンチラは原作小説のなかにあったエピソードで、小学校時代に従姉弟にスカートめくりされたという思いで話で盛り上がるのだけど、アニメではヘンテコな表現になってファンの中で賛否がわかれたことがあった。

 「うちの親父が言っていたけど、昭和のアニメではスカートめくりしたらパンティが見えただなんて場面はよくあったって言っていたよ。だからじゃないけど最近のアニメは誰かに気を使いすぎだなんだと、忖度しすぎなんだと。
 でも、こうやって女の子同士が仲良くするのも悪くないと思わない、基美ちゃん!」

 そういって愛梨は紘子の姿のままでまた基美の姿のままの志桜里の身体に抱きついていた。その時志桜里はふとこう思っていた。真里亜にされた弘樹にこうやって抱かれたとき自分はどう感じるだろうかと。恥じらい、それとも・・・?
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