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(5)志桜里新型美少女着ぐるみを試着

着ぐるみの世界へ

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 いつも着ぐるみ用のマスクを装着する時が一番ワクワクするのが志桜里だった。いつもの自分とは違うキャラクターになれるからだ。しかし今回の基美のマスクはいつもと違っていた。いままでのマスクとは違いVRシステムがついていたのだ!

 アイリス製作所が作るマスクは、、映画の特殊衣装の制作経験豊富の相川が作っているので、クオリティーの高いものばかりだったが、そんな彼が最新鋭のモニターを着ぐるみの内側の狭い空間に装着したのだから素晴らしいことが起きていた!

 志桜里も愛梨も、それぞれマスクを被り基美と紘子になったとき異変に気付いた。VRシステムが映し出す周囲の様子が変だったからだ。パソコンのモニターのように実際のものとは色彩が微妙に違うっていうレベルではない違和感があった。

 「育枝さん、なんかあたしって変かしら? なんかいつもの世界の違うみたいですけど」

 基美(志桜里)は作中の口調で思わず言ったが、目の前の育枝、そして着ぐるみの紘子(愛梨)が変な見え方がしたのだ。それは明るく幸福感溢れる鮮やかな光の世界・・・まるでアニメーションの世界に入り込んだみたいだった!

 「そうよ! そのVRが映し出す映像ってちょっとした細工をするのよ! いまあなたたちってアニメの世界にいるような気がするでしょ!
 ほら、見たことないかな? デジカメの加工オプションを使って風景がミニチュアのように見当たりする写真があるじゃないの?
 それと同じように、そのシステムは色彩をちょっと加工してアニメ風に見えるようにした映像を映し出すのよ、ねえ良いでしょ!」

 育枝はハキハキとなんか嬉しそうに説明してくれた。基美は2.5次元キャラクターであるので、アニメ(原作小説と設定が微妙に違うけど)の中の姿であるけど、まさか見る風景もアニメの世界になるとは思ってもいなかった。

 すると、同じように見えているはずの紘子が近づいてきた。

 「基美! いつもはケンカばかりしているけど今日は仲良くしようね。こんなことをしたりしてね」

 そういうと紘子は基美の胸に飛び込んで頬ずりしていた、じつは、この行動は真里亜が基美に甘える仕草だった。そう紘子は作中の行動をしたのだ。

 「あのねえ、紘子! 私はねえそんなふうに・・・しないはずよ! アニメの中じゃあ紘子と対立はしていても・・・」

 基美と紘子は作品世界では真里亜を巡り女同士の三角関係になっているのだ。だからこんな風に融和的な事なんか態度をとるはずもない行動だった、
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