アルテミスの着ぐるみ美少女たち

ジャン・幸田

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(3)コスプレ会場にて

基美の「内臓」の想い

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 基美の「内臓」になっている志桜里は暑苦しさを強く感じていた。成海が用意した着ぐるみマスクはいわゆる「ヘルメット型」だったため熱が異常に籠るためだ。

 着ぐるみのマスクにはお面のようなものとヘルメットみたいなものがあった。お面の方は能面などのようにマスクで顔で覆ってから後頭部で紐などで固定するものだ。こちらの方は露店などで売られている玩具のお面と構造が一緒などで比較的安価なものだ。

 一方の成海が用意した着ぐるみマスクはFRP(繊維強化プラスチック)で作られた本格的なもので、実際に着ぐるみショーなどのイベントに使われるものと一緒で、本格的な仕様であった。これは密閉度が高く「内臓」の頭部を完全に覆っていた。そのため完全に着ぐるみの中に閉じ込められるようなものであった。しかも呼吸はアニメ顔の大きな口の隙間から入る空気なので、まるでスキューバーダイビングでもしているような気分になるものだった。

 また最大の欠点といえば体温が籠るので体感温度が上昇するしかないということだ。しかも当日は容赦ない夏の日差しが気温をグングンと上げていた。だから着ぐるみの「内臓」はサウナに入れられた状態になった。だから「アルテミスの美少女たち」の着ぐるみの中には磁気ボードに”気持ち悪い”といって帰りたがる者もいた。そのため時間を区切って休憩をいれることになった。

 そんな状態でも志桜里は休憩に入ることなくずっと会場に基美として過ごしていた。これには成海も心配していたが、耐えるかのように着ぐるみのままでいた。
 そうしていたのも、志桜里が高校までやっていたバスケットの練習を思い出していたからだ。バスケットの練習は夏休み期間中も朝から晩までほぼ休みなく毎日すごしていた。しかも冷房などない熱が籠った熱い体育館だったので、熱中症になりそうな猛烈な環境だった。その時の事を思い出していた。

 着ぐるみの中で志桜里は、つらいが充実した帰らない日々を想っていた。あの時のようにアスリートの身体は戻らないが、暑苦しさだけは体験できるのが嬉しかった。それともう一つ良いことがあった。志桜里とは違う人物になれたことだ。種目は違うが基美に。

 基美になった志桜里は求められたら積極的に写真撮影に応じていたが、中には男性とツーショットにも応じていた。その男性と腕を組んだりしていたのだ。
 腕を組んだ時、「内臓」の志桜里の胸が相手の肩などに当たることもあったので、男性客の中には基美の「内臓」が女であることに気付いた者もいたようであるが、志桜里はそんなことお構いなしだった。

 不慮の事故以来、全身傷だらけになり引きこもりになっていた時期もあった志桜里は、人前に出るのも嫌だった。だから、こうして異性と身体を触れ合う事などできないはずだった。
 しかし基美の内臓になっているときは、志桜里は彼女の積極的でスキンシップする正確にチェンジしていると自覚していた。それが楽しくって仕方なかったのだ。

 そんな風に撮影に応じていた時、聞いたことある声が着ぐるみのマスク越しに聞こえてきた。
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