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(2)コスプレ会場の舞台裏

着替え

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 アニメ系の着ぐるみは「2.5次元」などといわれることがある。「二次元」の漫画やアニメの作品世界から現実の「三次元」に飛び出してきたものであるが、その中間という意味合いもある。
 「アルテミスの美少女たち」はもともとライトノベルであるが、表紙および挿絵を人気作家が担当したことから人気が出てアニメ化され、人気コスプレされる作品になっていた。だからコミックフェスの会場でも多くのレイヤーがそれぞれの登場人物に扮していた。

 マリー・サリヴァンに扮した成海が創造したキャラクターたち変身させるべく集められた少女たちの着替えが始まった。
 彼女らは成海の夫が制作した特殊な着ぐるみの内臓になるため、着てきた私服を全て脱ぎ去り生まれてきた状態になった。各々はいくら必要な事とはいえ恥ずかしそうにしていた。
 そして互いの身体に特殊なパウダーを塗り始めた。そのパウダーは着ぐるみの「内臓」になっている間汗が可能な限り染み出さないようにするものだった。

 「あなたの身体ってアスリートみたいに引き締まっているし背も高いわね、何か競技でもしていたの?」
 綾部紘子の内臓になる少女が大岩基美の内臓になる少女の身体にパウダーを丁寧に塗りだくりながら、マジマジと見ていた。その少女は基美の設定に極めて近いスタイルで、成海がファンの集いの中からすぐ見出したほど光り輝いていたという。
 キャラクター設定では紘子と基美は犬猿の仲で顔を合わす度に真里亜をめぐりトラブルを起こすが、「内臓」同士は仲の良い友人だった。

 「あれ愛梨、言っていなかったかな? わたしバスケットボールをしていたのよ」
 志桜里は少し気持ちよさそうな表情をしながら話していたが、その時愛梨はぎょっとした表情をした。

 「志桜里、この傷はどうしたの? さしつかえなかったら・・・」
 それはパウダーを塗っていた時に腕や背中に大きな手術跡があったからだ。その傷はザクロのように裂けたものを合わせてようなものだった。

 「これ? ちょっとグロテストだよねえ。これは交通事故に遭ってね、死にかけたのよ。こうして生きているからいいけどね。でもバスケットは諦めないといけなかったけどね。まだ腕や脚には金属プレートが埋まったままだし。
 だから夏でも長袖を着ているのはこれが理由よ」

 そういって志桜里は傷が残る腕を愛梨に見せていた。それは生きていく代償に打たれた刻印のようだった。

 「ごめんなさい、いやなことを思い出させて」

 「いいよ愛梨。この傷も着ぐるみになれば分からなくなるわよ。だから早く着たいわね基美になるために」
 そういって志桜里は用意した肌タイ(肌色の全身タイツ)に手を伸ばした。
 
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